曖昧な心地よさに満たされて
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る。それに情報通りなら、現在は陳宮と呂布率いる劉表軍の相手で忙しいはずなのだ。まだ安定していない孫呉なら戦力は少しでも欲しいはずで、しかしながら明が認めるほど優秀な隠密を寄越した。それがどういう事か分からぬ華琳ではない。
――通常の影のモノ程度なら問題は無かったのに……孫呉の警戒を一段階上げる必要が出てきた。麗羽達旧袁家のモノに留守を任せる以上は、秋斗の動きが読まれるのは危ういわね。
己が手で打倒すべき敵と定めた雪蓮を誇り高き英雄とは認めていても、それに捉われ過ぎる思考停止はよろしくない。相応しい舞台で戦おう、などと約を交わしたわけではないし、貸し借りも既に無くなっている。
呂布との戦闘の被害状況がどのようになるかは分からないが、雪蓮であれば、寡兵であっても華琳の居ない隙を突く事も有り得ると考えていた。
卑賤ととるか狡猾と取るか、それは人それぞれ。しかしながら戦とは本来そういうモノ。
“華琳の目指す覇王”が主の出払っている場所を襲撃すれば卑賤となるが、過去の英傑達からすれば当然の狡猾さ、というだけ。
指標として確立される王は一つではない。千差万別の違いがあり、そうであれと一般的に願われる固定概念に縛られて高説を述べる人間が居たなら、今の華琳はその人物を足りないと断じて興味を失うだろう。
人がそれぞれ違うように、王にもそれぞれカタチがある。だからこそ、彼女達は存在証明を在り方として体現しているのだ。
過去から学ぶのは確かに良いことではあるが、そのまま真似をするだけで自分が生きていると言えようか。世界に生れ落ちた自分自身が試行錯誤した上で道を開いて歩く事を望む……華琳の誇りは其処にあり、他者に求める誇りも同質。
誰かの真似事の人生に価値は感じない。人は自分にしかなれないのだから、と。
その点で言えば秋斗だけが華琳にとっての例外ではある。演じていると理解した上で他者の為に踊る道化師だけは、その心の在り方に重きを置いて真正面から否定せず、黒麒麟と混ぜ合わせて救ってやろうと考えていた。
――出来る限り馬騰との戦は先に終わらせたい。旧き漢の臣は総じて退場するか従わせてこそ意味がある……それに月のこともあるから西涼を抑えておけば涼州の安定化も迅速に行える。早期的な医術の発展の為に身元が割れた神医も手に入れたい。孫呉は……また交渉させるか、それとも……
着々と積み上げられる思考。その最中、雛里がもぞもぞと動く。
「どうしたの?」
「しょ、しょの……」
何か言いたげではあるが煮え切らない。
そこで華琳は、ああそうか、と気付いた。
――軍師としての発言を私にするから降ろした方がいいのでは、って聞きたいのね。
ゆっくりと腕を離せば、雛里は一寸驚いた後にぴょんと飛び降りた。
ハッとした
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