曖昧な心地よさに満たされて
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現実感覚が結構鋭い。絶望を越えた彼女は徳を語る先達の王としては申し分ないし、きっと劉備をより良く成長させていることでしょう」
言い聞かせるように紡がれたのは、そんな未来は起こらないとの否定であった。
華琳が白蓮に向ける信用は実績に基づいて判断されている。国の利益を考えるのは王として当然の思考であり、例え身一つになろうと国の為に殉ずる彼女が居れば、桃香を導くには十分に足りえる。
「で、よ。本題だけど」
短く一言。予想はこれまで。話を先に進めるべき、と。
「この話をしに来たのは……明からの細作に対する警戒忠告があったから?」
「うん。細作じゃなくて隠密らしいがな。孫呉の褐色猫狂いとかいう奴の匂いがするって言いに来て、なんでかしらんが荀ケ殿をお姫様だっこして走り回ってる」
「……わけがわからないわ」
「俺もだ。だが意味があるらしい。任せておけって言ってた。あいつも袁家討伐に行くから個人行動を予定してるなら今の内に話せってことだろな。
ちなみに、張コウ隊と徐晃隊の何人かが巡回してるが……どっちも細作の警戒は慣れてるらしいし、その猫狂いとやらだけ明が対処すれば大丈夫だとよ」
隠密、と聞いて軍師三人は緊張に身を引き締め、恐る恐るといった様子で天幕しか見えない周囲を見回した。
――お遊びにしか思えないのだけど……何をしているの、あの子は。
思わず片手で額を抑え、華琳は眉を寄せる。
明はそういった影の分野でも優秀な人材ではあるが、さすがに行動が異常過ぎたのだ。ただ、任せろというからには突っ込まない。
「春蘭や霞でも気付かない隠密がもう入り込んでるなんてね……」
「黒麒麟が連合戦終わりに行動を起こしたのが効いてるんだろ。それに袁麗羽に与えた罰が余計に警戒を与えたってのも一つかな。監視の目を立ててたにも関わらず入り込めたのは……多分アレだ。公開処罰の時が怪しい。まあ、それはいいか。入り込んでるもんはしゃあない」
彼は短く息をついてお茶を一口。
「明が対処してる間に俺の動きを決めた上で、孫呉への対策も考えておきたくて此処にきたわけだ。劉備のとこに居座る期間と連れて行く部隊は孫呉の行動如何に左右されるし、俺のもんになった旧文醜隊の掌握も早い内にしておきたいんだ」
ふむ……と華琳は顎に手を当てた。
軍師達の瞳にも知性の光が灯った。
――陣の外で処罰をしたからその間に入り込んでたのか……狙いをこの時の一点に絞ってるあたり……軍のどれかの部隊に紛らせてる草から処罰の情報も聞いてる……呂布よりもこちら優先とは……孫策、いや、周瑜も中々……ふふ……孫権も居るから……
思考に潜りながら徐々に緩んで行く口元。
楽しい、と感じていた。一度目の失敗を次に生かせる孫呉の評価が少しあが
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