曖昧な心地よさに満たされて
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ら聞いてるわよ」
ピタリと言い当てられて一寸止まる。
唇を尖らせた雛里は、哀しい瞳で秋斗をジト目で見つめた。
「あー……マジか」
「言っても簡単に治らないのは分かってるけれど……まあいいわ。話を戻しましょう」
咎めてやろうか、と思ったが止めた。此処でなくともまだまだ時間はある為に。
「あなたが街に迎えに来た時に話した通り、私は馬騰、孫策、劉備に同時進行で使者を送る。その内の一手をあなたと詠に任せて欲しい、ということでいいかしら?」
「ああ、それと同時に……表には出さないが名前だけ先に出しておくゆえゆえの下に袁麗羽と張勲を取り込んで河北の掌握を進めたい。内部反抗と外部からの襲撃に対する抑止武力は旧袁家の将。袁麗羽の裏切りは無いと見ていいし、現在の袁家に臣従してる輩は利と安全を求めて服従を示す。その間に華琳が馬の一族を臣従させられるだろ」
次々と並べ立てられる事柄。どれもが二人の思い描いていたモノで間違いなかった。
だがまだ足りない。二人共がこの話での不足分を理解している。
「劉孫同盟の締結……わざわざ悪名を被る一番の狙いはソレだしな」
「そうね。旧き龍が動いたおかげで私達には時間が出来た。アレは私との敵対を明確にする事を一番念頭に置いていたけれど、次点で孫呉を劉の名に従えさせる事を大前提として動いていた。不足分の兵数を補う為の同盟を組むにあたっての交渉対価では……孫呉側は劉備勢力に一歩譲らざるを得ない」
「助けを求めるか否か、求められて応えるか否か。お人よしで対価無し、なんてくだらねぇことするなら劉備は為政者として死ぬが……噂に聞く諸葛亮が居ればそれも起こらねぇし大丈夫かね」
「まあ……その時は先に劉備を潰しましょう。育つ兵力がどれだけになるかは分からないけれど、私の予想ではこちらも二面作戦を取って構わないし……」
「……?」
其処まで聞いて、秋斗は疑問が浮かんだ。
「華琳っぽくねぇな。大軍でどっちか一つを圧倒して無理矢理同盟を組ませると思ったんだが?」
眉を寄せての発言は華琳の目を細めさせた。
「私らしい戦い……ね。その思考に落ち着くのなら、前提として私の事を侮ってるわよ、秋斗」
発される凍りつくような覇気に、誰もが息を呑み込んだ。
ただし、華琳の腕の中にいる少女だけが俯いて拳を握る。固く、力強く……瞳には昏い暗い怨嗟を宿して。
「劉備が為政者として最低限の強かさを持てないのなら私が戦うに値しない……そんなくだらない相手なら、言葉を交わす価値も生き残らせる価値もない。
そもそも、甘い幻想を叶える機会を一度ならず二度も与えてやるなんて……私の矜持に反するわ。その時に利を見極めるであろう諸葛亮をそんなモノの為に使い潰すのも許されない。
何より……」
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