曖昧な心地よさに満たされて
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ば誰も付き従わず、反抗の芽は二度と華開かない。
自分の存在証明全てを捨てても復讐をしたいような個人単一だけの狂気では、国という大きな力をカタチ作る群体――人の心は動かない。
よしんばそれが為せるとしても、真名という概念の崩壊につながり、世界の理への反逆となる。空想の物語、勇者が魔王を討伐するかの如く、人々は団結し合ってその権力者や従う者を敵として排除するようになるだろう。
さらには、真名に対する罰則を受け入れられないモノは華琳への敵対を示す事に繋がり、今後の乱世で覇道を示す為のよりよい環境が出来上がった。
そんな幾重にも波状効果の広がる恐ろしい楔を世界に打ちこんだのだ、彼らは。
人材は宝である。呑み込み、受け入れ、背負う三人の王が軍師達と隔絶されている視点は、その一点のみを見極めて答えを出した事だけ。
長き世を想うからこそ、人の持ち寄る才を愛し、“国”をカタチ作るモノを間違えてはならない。その上で冷たい覇道を行く三人は、人材を得る為の理と効率を……汚名悪名を被せられる事を対価に奪い取ったのだ。
「蜀の地を手に入れる漢の希望である大徳に、覇道に従う私の為の大徳が先の先で行われる戦に対しての宣戦布告を為す……そして公孫賛の反発を“わざと受けて”幽州の者達の怨嗟を捻じ曲げ黒き大徳への信仰を強固にし、尚且つ公孫賛が帰還する為の土台を造り上げる……黒麒麟であってもソレを願ったでしょう。離反する計画を練った上で」
「……遠大な計画だと後の歴史家なんかはいうかもしんないな。獅子身中の虫として生きた忠義の徒、とかなんとか。大徳って呼び名が広まっちまったせいでさ。
ま、ひなりんの話を聞く限りでは万が一戻っても有り得んよ。ひなりん、ゆえゆえ、えーりんが劉備を見限った時点で黒麒麟の計画は潰れてる……それを知ってるのが俺らだけってのが一番いい一手なわけだけど」
にやり、と口を引き裂いた。
黒麒麟の裏切り計画には雛里達の存在が大前提であり、桃香の思想改変が行われていなければそれは為せない。
覇の道を歩めない王の元では生きられないと、今の秋斗は誰よりも理解していた。
――不安があるとすれば……黒麒麟が“俺”を忘れて単独で何かしら動いちまうことか。そればっかりは元譲達に頼んどくしかないよなぁ。
当然、今の秋斗が黒麒麟の記憶が無いように、その時の自分がどう動くかなど予想も出来ない。
春蘭や秋蘭、霞に明。副官として側に置くつもりの猪々子等と事前に話して止めて貰う……それくらいの手しかまだ考えついていなかった。
そんな一人思考に潜り始めた秋斗とは別に、華琳は呆れたようにため息を一つ。
「どうせ自分の記憶が残らなかったら、とか考えているんでしょう? 会話の本筋を相手に思考させておいて別の事を考えるクセ、雛里か
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