曖昧な心地よさに満たされて
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も同時。繋がれる想いも、同質だった。
「この戦で散って行った想いの華を、先の世の為に捧げよう……」
一歩一歩と進んで行く黒の背は前よりも大きく見えた。
「乱世に華を、世に平穏を」
――乱世に華を、世に平穏を。
彼の言葉に合わせて華琳も心の中で紡いで、ひらひらと振り向かずに手を振る彼に背を向ける。
「おやすみ、秋斗」
「ああ、おやすみ、華琳」
静けさが寂しい夜の帳。
彼と彼女の心には寂寥も後悔も無く。
向ける信頼からか、曖昧な暖かさが仄かに揺蕩っていた。
蛇足 〜猫耳軍師と紅揚羽〜
「にゃははははーっ♪」
「いい加減降ろしなさいよ明っ! ふぁっ……こら! 頬をすり寄せんなバカぁ!」
「い、や! 桂花をもっふもふするのがあたしの仕事だもん♪」
きゃいきゃいと喚く二人は陣幕の中。
物陰に隠された端の端で、百合の華咲く逢い引き……のようなモノを繰り広げていた。
「いんだよ、出て来てもさぁ? 桂花をもっふもふしたくない? ちょっとくらいなら触らせてあげない事もないよー? あ、でも桂花に危害を加えたら地の果てまで追い詰めるからあしからずー♪」
誰も居ないはずなのに声を掛ける明は、他から見たらかなり痛い子にしか見えない。
だが……其処には一人の少女が隠れて、落ち込んでいた。
――な、なんでいっつもあの人にはバレるんですかぁ〜! 今日こそはと思ってたのに!
自分の隠形が拙いのかと思い悩む。
少女の名は明命。孫呉の隠密でも最優秀の者である。彼女を見つけられるモノなどそうそう居ない。
しかしながら、常日頃から暗殺等に関わってきた明は、彼女の存在に気付ける程に感覚が鋭かった。
「……何もいないじゃない。ホントに居るの? 隠密なんて」
「んー♪ 疑ってる桂花もかぁいいなぁ♪」
「だ、か、ら! 頬刷りするのやめろ! 死ね! この淫乱百合女!」
「いいの? あたしが死んだら桂花は隠密に捕まって、らめぇ〜〜〜って言わされるようなふしだらな拷問受けちゃうかもしんないよ?」
「はぁ!? 華琳様に操を立ててる私がそんな事言うわけないじゃない! みくびんな! どんなふしだらな拷問にだって耐えてみせるわよ!」
――そんなことしませんよ!?
あまりな言い草に思わず心の中で突っ込む明命。
激昂しながらも気配をそのまま抑えられる辺り、彼女の心の強さが伺える。
だがしかし、抑えがたい欲求が湧き立っているのも事実。
――でも、荀ケさんをもふもふ……したいなぁ。
明が名付けた褐色猫狂いとは言い得て妙、というかそのままなのだが、彼女は大の猫好きであったのだ……というかお
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