曖昧な心地よさに満たされて
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って、黒麒麟の記憶を手に入れて、私のモノになるあなたが話しなさい」
有無を言わさぬ覇気が浮かぶアイスブルーの瞳が、黒瞳を逸らさせる事を許さない。
――そればっかりは話してやれねぇな、華琳。世界を騙す嘘つきは、嘘をついたままでいなきゃならん。
誰かに頼ることも、誰かに話す事も彼にとっては間違いで、
この世界を誰かの思惑が介入した茶番劇場などにはしたくない。華琳の為にも、皆の為にも、一人ひとり想いの華を咲かせた人達の為にも。
だから彼は――――嘘をつく。
「……ん、了解」
短い返答は瞳を逸らさずに。
彼女の向けてくれる優しさと厳しさに感謝を込めているから、嘘の答えが誤魔化される。
「でもな、俺は誰かのもんにはならねぇよ。特にお前さんの所有物になんかなってやんねぇ」
重ねて吐く言葉は本心であるが故に、話を逸らす手段と為る。
「俺は俺で、華琳は華琳だ。守り守られるなんざ御免だろ。支え合うのなんからしくない。勝手に支えて、勝手に使って、勝手に利用して、勝手に守って……そんな意地っ張りが俺らの関係には丁度いい。
そんでさ……」
目を細めて、秋斗は喉を鳴らした。
「クク、俺だけは宙ぶらりんのまんまお前さんの側に、自分勝手に立ってみたいのさ」
声に出しては言う事だけはしてはならないから、続きだけは胸の内に。
――寂しがり屋の覇王様。欲張りな黒の道化師は、お前さんの、華琳としての笑顔だって欲しいんだ。だから、友達になれるよう頑張るよ。
見つめ合う。心の内を読まれていないかと思いながらも、彼女の覇気を真っ直ぐに受け止めて。
幾瞬、彼女は目を瞑り、大きくため息を吐き出した。
「……そういう所、本当にいらつく」
後に浮かべた悪戯好きな笑みに合わせて、金髪の螺旋が楽しげに揺れ動いた。
「あなたの意地っ張り、叩き折ってあげるから覚悟なさい」
「怖ぇ怖ぇ。ほんっと、お前さんにだけは敵わねぇよ」
「ふふ、よく言う……だらだらと過ごすわけにも行かないわ。終わりにしましょう」
「ああ、いつもありがと、華琳」
穏やかで意地だらけの二人は、互いに目を伏せて見ない振り。
近すぎる関係ではなくて、遠すぎる関係でもない。
曖昧な線引きを違いに引いている彼と彼女は、二人共が似たような苦笑を零して立ち上がる。普段ならしないが見送りをしよう、と華琳も天幕の入り口に歩いて行く。
「……一つの戦の終わりだ。道化師として、居ない黒の代わりに言っておくかね」
「片方だけじゃなくて両方を繋ぐ気になったから、でしょ?」
「そうとも言う」
ゆっくりと天幕の入り口を開く。
宵闇の深さに、煌く星が散りばめられていた。
見上げたのは同時。微笑んだの
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