曖昧な心地よさに満たされて
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持ちつ持たれつの関係を続けてきた店長と華琳の関係が崩れるとなると、少しばかり害が多すぎた。
――袁術個人に興味は無いけれど、張勲と店長の二人を対価にしなければならないなんて……度し難い。店長をこんな政治絡みに巻き込むのは気が退ける……けど張勲との事は任せるしかないか。
麗羽のように仮面を被っていたならまだ良かったが、美羽はそのまま自分のしたいようにしていた事に気付いているから、華琳の中で美羽の評価は低い。
「……袁術ねぇ」
大きな部分を見ている華琳とは別に彼は自分なりの思考を繰り返していた。
無意識に漏れた言葉に、皆の視線が集まった。
「ああ、すまん。どんな奴かって気になってな。とりあえず張勲は欲しいし、店長との不仲もよろしくない。袁術を生かすのは確定だろ? 孫呉のことがあるから手元に置いておいたらいつか使えるかもしれないし、店長に任せてやればいいさ」
慌てて言いつくろった彼はどうにか誤魔化す。
また何処かズレた思考をしていたんだろうと思うも、話を進める為に問い詰める事は誰もしなかった。
「……そうね。とりあえずこれで軍師三人の意見は賛同は得た。桂花には雛里が、稟には詠が、風には朔夜が説明して、二人一組で気付かれないように煮詰めて帰るまでに個別報告をして貰いましょうか。帰還後、私が吟味した上で判断を下す」
御意、と頷く三人に対して、秋斗は軽く目礼を返す。
今日は此れで終わり、と誰もが感じ取った。
「早い段階で実のある話が出来て良かったわ。判断を下したのはあなただけど、明にもご苦労と伝えておいて頂戴、秋斗」
「ん、了解。こんな遅くまですまんな」
「いいのよ。機を見て敏なりは基本。機を逃してしまえばそれだけ人の命も時間も奪われる事になる。それに……」
ふ、と満足気な笑みが零れた。視線は三人の少女に向けられて、其処には優しく暖かい光が宿っていた。
「詠の照れた姿、朔夜と雛里の嫉妬……愛しい子達の可愛い所をたっぷりと見れたのだから、少し張っていた心の休息にもなった」
三人が三人とも顔を俯けて目線を逸らす。
失礼ね、と華琳は苦笑を落とした。
「さ、そろそろお開きとしましょう。もう夜も遅い」
そう言われて天幕の入り口まで歩いて行く軍師達。
お茶の片付けだけでも、と秋斗は湯飲みを盆に乗せて行く。
温くなったお茶を飲み干し、椅子にゆったりと背をもたれさせた華琳が宙に大きな吐息を吐き出した。
「ただ、秋斗だけ少し残ること。質問疑問は受け付けない。少し二人で話したいことがあるわ」
何を……と言う間もなく言われては何も言えない。
皆は訝しげに見つめるも、華琳に従った。
「……おやすみなさい」
「おやすみ、なさい……です」
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