第3章 新たなる好敵手
第16話 決意する2人
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それは、襲撃者バラムが去り際に残して行った言葉。
一体、彼は《フレスヴェルク・ドラゴン》を何のために欲しているのか。
分からない事はそれだけではなかった。
アルカディアシティで初めてバラムと接触した際、周囲に遊雅以外の人の姿がなかったにも関わらず、彼は誰かと会話しているような独り言を漏らしていた。
あれが本当に独り言だったのだろうと考えるほど、遊雅も楽観的ではなかった。
となると、敵は複数存在すると言う事になる。
昨晩は何とか彼に勝利した物の、それも《フレスヴェルク・ドラゴン》の導きがなければ勝ち取れたかも定かでない結果だった。
そんな相手に更に協力者がいるとなれば、それはもはや遊雅の手に負える相手ではなくなってしまう。
どうすればいいんだ……遊雅がそう考えた所で、彼の思考に何者かが介入して来た。
「何が?」
「えっ?」
遊雅の思考を中断させたのは、いつの間にか彼の隣に腰掛けていた亜璃沙だった。
突然声を掛けられた事にも驚いたが、何より疑問だったのは、亜璃沙に掛けられた言葉の意味だ。
遊雅はその言葉を、ほとんど変わらない形でそっくりそのまま亜璃沙に返した。
「何がだ?」
「いや、今『どうすればいいんだ』って呟いてたから……」
「……俺、口に出してたか?」
「ええ、何か悩んでるみたいだから隣に来てみたら、いきなりそんな事言うから、つい気になって聞いちゃったわ」
「そ、そうか……いや、何でもない。気にしないでくれ」
「……ねぇ、何かあったの?」
亜璃沙の問いかけに、遊雅は正直に答えるべきか否か、しばし迷った。
時間にしておよそ30秒、お互いに無言の状態でたっぷり考え込んだ結果、遊雅は亜璃沙に自分の悩みの種を打ち明ける事にした。
彼女に何かを聞かれたら正直に答える、と言う約束を遵守した結果だ。
「実は……昨日の夜、またあいつに襲われたんだ」
「あいつって……《フレスヴェルク・ドラゴン》を狙ってるって言う?」
「ああ」
その言葉を聞いて、亜璃沙の顔に明らかな動揺の色が浮かんだ。
非常に近しい存在である幼馴染が2度も襲撃されたとあっては、無理もないだろう。
「みんなが寝た後、燈輝から連絡があったんだ。ACSの生徒が1人、何者かにさらわれた。だから、取り戻すのに協力して欲しいって」
「……それで?」
「その生徒をさらったのが、あいつだったんだ。デュエルで勝てばさらった生徒を返してもらうって約束で、俺はまたあいつとデュエルしたんだ」
「勝ったの?」
「何とか、な……それで逃げる時に、あいつは言ったんだ。『これで終わったと思うな』って」
亜璃沙は俯いて、視線の先にあった自分の両手を合わせて強く握り締めた。
そうして何とか不安を押し殺しながら、彼女は遊雅の話の続きを促した。
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