第十六話
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貴殿に手篭めにされそうになったがゆえに逃げてきたのだと!!
いくら武芸に秀でているとはいえ、女子を手篭めにしようとは」
「だから待て! ……アイツがいたのか? 甲斐に」
「某の屋敷で働いておられた……しかし貴殿がここに現れることを知り、逃げるために早々に甲斐を発たれた!!
貴殿さえ来なければ、某の屋敷でずっと過ごしてもらえたと思っていたというのに……!」
……おい、ちょっと待て。テメェ、もしかして姉上に。
流石に色恋沙汰には疎い俺も、相手がどういう感情を抱いているのかくらいは分かる。
当然政宗様もそれに気付いており、これには気分が悪かったのか、真田をきつく睨んでいた。
「おい、紅いの」
「あ、紅!? 無礼な!」
「そいつは聞き捨てならねぇな。アイツは俺に仕えてんだ、テメェなんざにやれるはずがねぇだろうが」
「嫌がって逃げてきたではござらんか! 大した持ち合わせも無く、着の身着のまま逃げてきたといった様子で……
某、貴様の愚行を断じて許すわけにはいかぬ!!!」
槍を構えた真田に向かって、政宗様は六爪を抜き放った。止めるべきかとも考えたが、こうなってしまった以上放っておく他ないだろう。
いちいち止めるのも労力を使う。そもそもこいつは上杉と武田の戦に伊達が入らないようにと妨害する為に現れたんだ。
どちらにせよ避けて通ることは出来ないだろう。ならばと俺も休憩が出来て良いと考えることにした方が良さそうだ。
いや、ちょっと待て。姉上が世話になったってんなら、流石に礼の一つも述べなきゃならねぇか。
何も言わずに、ってのは無礼だろう。
「政宗様、しばしお待ちを」
「Ah!?」
政宗様の側をすり抜けて真田の前に立つ。いつでも襲い掛かってくる様子のそいつに向かって俺は頭を下げた。
少しばかり怪訝そうな顔をしていたが、続けた俺の言葉に真田の表情が柔らかくなった。
「姉上が世話になったようで申し訳ない。恩に着る」
「もしかして、小夜殿の弟君でござるか?」
どうやら俺の事は話をしていたようだ。奴は戦闘態勢を解いている。先程までの怒りはすっかり納まり、
笑顔さえ見せているところを見ると、相当姉上はこいつに気に入られたんだなと腹の底で考えている。
政宗様も俺がいるから襲い掛かったりはしないが、かなり面白くなさそうだ。
……全く、御自分がどういう経緯で奥州を離れることになったのか分かっていないのか?
知らない男に着いて行くなと教えなきゃならねぇのか。三十近くにもなって。
「おお、貴殿がそうであったか。何となくだが小夜殿に似た雰囲気がある。奥州に残してきた弟が心配だと言っておられたが……」
……姉上、世話になった先で一
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