トロール襲来
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分の迂闊さに腹を立てながら、右の腰に差した小太刀を鞘から引き抜く。そのままドアまで駆け抜け、刀身が紅に染まった小太刀でドアを一刀両断した。
小太刀を鞘に戻しながら、クレスは呆然とみていた二人を手招きして、三人は中に突入した。
ハーマイオニー・グレンジャーは、奥の壁にはりついて縮み上がっていた。いまにも気を失いそうな状態だ。トロールは、洗面台を次々となぎ倒しながら、ハーマイオニーに近付いていく。
「こっちに引きつけるんだ!」
ハリーは無我夢中で二人はにそう言うと、ロンは落ちていた蛇口を拾って力いっぱい壁に向かって投げつけ、クレスは杖を取り出し、ダンブルドアが先ほどやったように爆竹を鳴らす。
トロールは、ハーマイオニーの1メートル手前で立ち止まり、ドシン、ドシンと向きを変えると、鈍そうな目をパチクリさせながら、何の音だろうとその方向を見た。
そのままクレスとロンがトロールを引きつけている内にハリーはハーマイオニーのもとにたどり着いた。
「さあ、早く逃げよう!」
「ごめんなさい……腰が抜けちゃって…」
ハリーはハーマイオニーの肩を持ち、出口に向かって歩を進める。すると、二人の方に注意を向けていたトロールが、ハリー達の匂いを嗅ぎとったのか、突如向きを変え突進していく。
「ちぃ、仕方ねぇ! ……アップ」
クレスは凄いスピードでハリー達の前まで移動し、二人を庇うように立ちはだかる。
トロールは目の前に現れたクレスに向かって棍棒を振るり下ろした。最悪の事態を想像し、三人は思わず目をつぶる。
「てめぇはもう詰んでるぜ、豚肉が」
しかし、信じられないことに、クレスは棍棒を片手で受け止めていた。そのまま困惑しているトロールに近づき、片手を添える。
魔法使いは杖を用いて魔法を行使する。では杖が無ければ魔法を使うことはできないのだろうか?
そんなことはない。事実、11歳になり杖を持つ以前も、
魔法使いの素養を持った子供は魔法を発現させることがあるし、杖を持ってからも感情を爆発させれば、なんらかの変化が生じることがある。とどのつまり、杖が無くても魔法は使えるのだ。
魔法には魔力を必要とする。これは魔法に携わる者ならだれでも知っている理屈だ。では魔力とはいったいどこにあるのか? 勿論魔法使いの身体にある。その魔力を杖を媒介にして発動する−それが人間の使う魔法である。
どうしてそんな面倒な手順を踏むのか?……それは杖を使わず魔法を行使することは、杖を使う場合に比べてとても難しいからだ。思い通りに魔法を行使したければ、そ身体を循環する魔力を完全にコントロールする必要があるからだ。
現代のマグルが木を擦りあわせて火をつけることはせずライターを使うように、ほとんどの魔法使いも発動が容易である杖を使う
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