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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
追憶の惨劇と契り篇
48.静寂からの始まり
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これ以上、情報を与えるのは彼女たちを怯えさせて冷静な判断を鈍らせるだけだ。
「それじゃあ、頼んだよ」
黒猫の声に少女たちは「はい!」と返事をして一斉に神社から街へと駆け出していった。
「待ちなさい、逢崎友妃」
古詠が先ほど少女を呼び止めた。
友妃と呼ばれた少女は驚いた表情を浮かべて恐る恐る歩み寄ってくる。
「な、なんでしょうか?」
「あまり“夢幻龍”の力を使わないようにしなさい。それは完全にあなたを選んでくれたわけではありませんので」
「は、はい。わかりました」
「それではお行きなさい」
古詠の言葉に友妃は深く腰を曲げてお辞儀をしてから階段を下って行った。
それを見送っていた黒猫は小さく溜息をついて呟いた。
「“夢幻龍”をあの子に持たせたのは、彼の真意を探るためなんだろ、“
静寂破り
(
ペーパーノイズ
)
”」
古詠は黒猫を見下ろす。
「本来操れるはずがない彼がどうやって“聖殲の遺産”を使用できたのか興味がありますしね」
そう言って獅子王機関の三聖は燃え盛る街へと目を向けるのだった。
「あー、鬱陶しいな!」
海原は自分に合わせて動き回る地面に苛立っていた。そんなことが普通の街で起こるわけもない。そもそものことを言うならば、これだけの区域の地形を操ることなど並みの魔族では行えない。
こんなことが行えるのは、よほど優れた魔術師か吸血鬼の眷獣くらいだ。もちろんのことながら海原がいま苦戦しているのは後者だ。
「なんで自分まで暴走してるんや!」
次々と変化していく地形の中でその中心にいる女性へと語りかける。茶髪の長髪でそれをシュシュで一本にまとめて肩にかけている端正な顔立ち。白いトレンチコートに下はショートパンツというなんとも寒そうな格好をしている。
その女性のことは知っている。美鈴や京子達のように戦わないことでこの祭典を終わらせようと約束した
六宮恵
(
ろくみやめぐみ
)
だ。
もともと彼女は、“
神意の暁
(
オリスブラッド
)
”になった自分のことを嫌っており
二つ返事で承諾してくれた。
しかしその恵が今敵として海原の前に現れた。考えるまでもなく彼にやられたのであろう。圧倒的な力を持ったあの少年にだ。
彼女は戦うことを嫌っている。だからあれは眷獣に乗っ取られた姿なのだと一瞬で理解することができた。
それだから助けなければならない。このまま恵を暴走させ続ければ魔力がなくなって死んでしまうかもしれない。その前に例のメスを刺して眷獣を奪い取ればのだが、魔力が少なくなるのを待っていたらこの街への被害は計り知れないものになる。
できる限りの被害が出る前に止めなければならない。
「クッソ……どないするか?」
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