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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
追憶の惨劇と契り篇
48.静寂からの始まり
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の沈黙を切り裂いたのは大阪弁の男性の声だった。そちらの方へと振り向くとそこには患者服に身を包んだ黒髪の青年が立っていた。寝癖なのかツンツンの頭に顔つきはどことなく気怠そうにも見えてしまう。それもそのはずだろう。彼はほとんど丸一日寝ていたのだからだ。
「海原さん! もう体は大丈夫なんですか?」
「ああ、この通りピンピンしとるわ」
自らの腕を回して元気であることをアピールする。しかし急に体を動かしたせいでよろけ倒れそうになる。手を壁においてなんとか転倒するのだけは回避する。
「大丈夫ですか、海原さん!」
慌ててそちらへと駆け寄る。
「お、おう。ちびっと張り切りすぎただけぇやから」
苦笑いを浮かべる海原にホッとする。
「海原、あんたはまだ怪我人なんだから寝てなさい」
白衣の内ポケットから煙草のケースを取り出しながら京子が呟いた。
「別にあんぐらいの怪我なら大したことないわ」
「彼にぶん殴られた傷すら治ってないのによく言うわね」
京子が海原の顔を指差す。そこには確かに殴られたように赤く腫れ上がっている。吸血鬼相手にそんな武術も使わずに力任せに殴る人物など彼しかいない。
海原は殴られた頬をわずかに触れる。
「そういや俺を殴ったっていうやつは誰や。しっかりとお礼しなあかんからな」
「それはダメですよ!」
「冗談や」
海原は笑いながら返した。
「海原くんも揃ったし本題に行かせてもらうわね」
美鈴がいつも顔からは考えられないような真剣な声が響いた。それをきっかけに雰囲気が一変する。
「今のところ協力してくれているのはここに五人と六番目、十番目だね」
「昨日のことを考えると九番目は好戦的でしょうね」
アレイストが少し悔しげに口を開く。昨日、彼は九番目と戦った。聞いた話だが、力としてはアレイストの八番目の眷獣、“
狩人の二牙
(
アルテミス・ストレ
)
”と互角だったらしい。そんな相手が敵だということはこちらとしてもかなり不利となる。
「それに加えて海原くんをそんな風にしたっていう彼の存在も気になるしね」
海原へと一瞬目線を向けて美鈴は再びパソコンへと戻す。彼曰く、突然と現れたと思ったら一瞬のうちに体を貫くような感覚とともに意識を失ったらしい。そして目を覚ましたらこの状況だったということだ。だが、一瞬だけ見えた彼の姿は高校生くらいの少年だったという。
「とりあえず、今のところ姿を現してないのは、一番目と二番目、十一番目、十二番目ですね」
この四人の中に海原を襲った人物がいるということになる。
「私としては、一番目と二番目が気がかりなのよね」
煙草を吸いながら京子が呟いた。確かにその通りかもしれない
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