第一物語・前半-未来会議編-
第一章 時の始まり《1》
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本当に大丈夫なんでしょうか……。
映画面を消していて咲は思った。このクラスの学勢は変わり者ばかりだと。
彼らに限った話しではないが。
「まあ、見守ろうじゃないか」
「読心術ですか!?」
「見れば解る」
見透かされたような言葉を言われ、咲は心底驚いた。
今、自分の目の前にいる学勢達が今後の日来の運命を背負っている。
崩壊世界では学勢達に、こんな重い責任を背負わせないんですけどね……。
咲は自分の担当するクラスを、心配そうに見詰めていた。
何一つ取り柄の無いこの町だが、ここは彼らを受け入れてくれた。
世界では様々な事情を抱え、祖国から離れる者は少なくない。日来は、そんな者達が最後に行き着く場所。
だからここの住民はお節介が大好きで、仲間を犠牲にすることは絶対にしない。誇れるとしたらそこだろう。
日に照らされているこの町は、このままで終わりへと進んでしまう。今、馬鹿騒ぎをしている学勢達はそれを防げる最後の砦。
日来覇王会会長である彼が何を考えて、社交院と交渉したのかは、咲や周りの者達の殆どが知らないだろう。
しかし彼は、社交院と交渉した時に確かにこう言ったらしい。
″身近にあるものくらいは救ってやる。何かが欠けてる俺達だけど、それくらいは出来るからさ″、と。
そして今、彼の声が聞こえる。
皆を頼るように、自身を奮い立たせるように。
「まあ、難しい話は後にして、いっちょ救いに行こうぜ。俺達を終わらせないためにもなあ!」
「「了解!」」
セーランの言葉に、腹から声を出し皆は答える。
今、彼らは外交区域学勢領に向かい歩いて行く。セーランを先頭に、それぞれが彼の後に続いて。
日が射す道を、彼らはただ歩く。
そんな彼らを見送る者はいない。ただ、沈黙がその場を支配していた。
だが全ての始まりは静かに、しかし確実に始まった。
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