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101番目の舶ィ語
第十一話。人喰い村からの脱出
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「川、か……」

2人で走って真っ暗な森を抜けると、川に行き当たった。
川幅は大体10メートルくらいで、水位は膝丈くらい……に見える。渡ろうと思えば渡れる川だ。
だが、今は夜でDフォンのライトが無いと視界もよく見えない。
いざという時は渡って逃げないといけないだろうが、今はラジオのノイズが鳴るまでここで小休止をしようと思う。

「少し休もうか?」

「はぁ、はぁ、はぁ……いいの?」

「うん。川の水は飲めないけど休むだけならね」

川の水を使って手や顔を洗いたいところだが、うっかり口に含んでしまい飲んでしまえば大変な事になる。
『異界の食べ物などを口にしたら戻れなくなる』。
キリカから聞いた言い伝えだが……確か、「黄泉戸喫(よもつへぐひ)」と言うんだっけな?
もっとも既に手遅れかもしれないがな。自治会館で食べ物や飲み物を出され、出したのがリサという事もあって俺は気にせず口に含んでしまったからな。

「はぁ、はぁ、ふぅ……」

隣を見れば音央もすっかり息を切らしていて、川をじっと見つめていた。
さっき、勇気を振り絞ったとはいえ、その表情には戸惑いが見える。
無理もないと思うが……変に気遣うよりも、いつも通りに接した方が彼女のためかも。

「川は使えそうもないな」

「ん……やっぱり川の水もアウトなのかしら?」

「異世界の物を口にしたら戻れなくなる……んだろうな、多分」

「なんかどっかで聞いた黄泉の国の話みたいね」

一般人の音央でも知っている有名な神話。
伊奘諾(イザナギ)伊邪那美(イザナミ)の異世界での夫婦喧嘩。
……そう。
確か黄泉の国の食べ物を食べると、人間の国には戻れなくなる、というのがその神話に出てきたはずだ。
黄泉の国、つまり死者の国。
そして、俺達がいるのは______
人喰い村、人が消える村。
______この村にいる人々はみんな死者だという。
その死者に追いかけられているのだから、あながちその表現は間違っていない気がした。

「ふぅ……」

汗だくな体を持て余しているのか、音央は胸元をパタパタとして空気を送り込んでいた。じっとりと体に張り付いている衣服がなまめかしい。
その姿を見て気持ちが高ぶり血流が良くなり、ヒステリアモードがより強くなった。

「何見てんのよ」

じとーっとした視線は、いつも学校で彼女が見せるものだった。
本当ならこんな世界に入ってくる事はなかった彼女に、俺は……

「可愛い子の、可愛い仕草は絵になって目の保養になるなぁー、と」

「バカっ。スケベっ」

「ははっ、男だからね!」

極力いつものノリ、いつもの会話を心がける。
音央もそんな俺の気遣いに気づいているのだろう。
なんとか頑張って『い
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