第十一話。人喰い村からの脱出
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今日、明日ならともかくずっと飲まず食わずだと持たないな」
「詞乃ちゃんをなんとかする……っていうのは無理なのかしら?」
「難しいなあ。あの子、傷つけても傷つけても回復しちゃうからなー。普通に戦ってもジリ貧するだけだな、あれは」
人の姿をしているが、彼女は『人喰い村のロア』だ。
つまり『村そのもの』があの子なんだ。
そのロアは、迷い込んだ人を殺し、自分の村に住まわせるというもの。
ある意味、『村に食べられた』という事になるのだろう。
「脱出の方法が分かり易く、ボスを倒せば……っていうもんでもないだろしね」
「うん。死んじゃった人が生き返るなんてありえないしね……」
そのありえない出来事をついさっき『やっちまった』んだが、さすがの俺も村人『全員』を生き返らせるなんて事は出来ない。
全員助ける方法があるとすれば、それこそタイムスリップして、ここに迷い込まないようにするしかない。
______もう、決して助からない人々や犠牲者も存在する。
それが『ロア』と戦うという事なんだ。
胸の中に重いものが積み上がったような感覚がして、音央に気づかれないよう、顎を下げて唇を噛む。
『大切な人を守る為に相手を殺す』
一之江はとっくにそれを知っていて、覚悟して戦っている。
俺も時には『殺す』覚悟を持たないといけないのかもな。
そう思って顔を上げると。
「……モンジ……」
音央が心配そうに俺を見ていて、俺は彼女の手を握り締めていた事に気づいた。
「ごめん。もう大丈夫だ」
「ううん。 ……一人で考え込まなくていいからね?」
音央のそんな優しさが胸に染みた。
みんなを救いたい。
そう思っているのは音央も同じはすなのに、彼女は俺を気遣ってくれている。
そんな彼女の優しさに甘えながら思う。
____少なくとも、何があろうと音央だけはちゃんと帰そうと。
ザザザザザザザザザザッ??
「チッ!ついに、来たか……!」
長い間休ませる気はない、って事か。
俺達はすぐに反応して、より村から遠ざかろうと川の方を目指そうとしたが……。
「モンジ、あれ!」
だが、川の方からいくつもの懐中電灯の明かりが見えた。
「挟み撃ちか??」
村の方角からも複数の足音が聞こえる。
前後挟まれる形で、かなりの村人が迫っている。
まさか、一斉に集まってくるなんてな。正直、この数はどうしようもない。
「あははっ、モンジさんっ?」
その声に反応し、上を見上げる。
高い木の枝に、詞乃ちゃんがニコニコ顔を浮かべながら座っていた。
彼女の格好はさっきと同じ赤いワンピースだが先ほど見たときよりもビリビリに切り裂かれていて、痛々しい服になっている。
(……
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