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101番目の舶ィ語
第十一話。人喰い村からの脱出
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「うん。さっさと出ましょう。もしくは会長への想いでも語ってればいいのよ」

こんな時に、こんな場所で。
騒げばすぐに村人達に見つかりそうだというような状況だというのに。
音央はあくまでいつも通りを俺に要求してきた。

「そうだね、ここにいたのが先輩だったら……」

「だったら……もっとカッコつけてた?」

「いや、普通に会話してたと思うよ。
普通に、『先輩の髪、いつもにも増して艶やかで纏まっていて綺麗だね』とか。
『この前のようにお姫様にしてあげよう』とか言ってたね、きっと」

「……は?」

音央の顔を見ると、彼女は俺が言った言葉に呆然としていた。
その目は『あんた……ヘタレじゃなかったの?』と言っていた。

「……なんてね。冗談だよ。冗談」

「そ、そうよね。モンジだもんね。
うん。モンジは不器用でヘタレだし」

音央は静かに立ち上がると、川の方を見つつ、ラジオを耳に当てていた。
俺も視線を向けて、耳を澄まし、Dフォンを確認する。

「どうかな?」

「なんの音もしないわね。そっちも?」

「赤く光ってないし、熱くもなってない」

「もう少し休めるなら、そのうちに色々教えてよ」

「そうだね。よいしょっと」

Dフォンを手に持ったまま、立ち上がった。

「やっぱ、一之江さんが転入してきた頃にこういうの始めたの?」

「まぁな。あいつもちょっとした都市伝説のオバケなんだが、それに追われたんだ」

「へえ? オバケな転入生なのにモンジと仲良しになったの?」

「……仲良しだったらいいんだけどねぇ……」

思い返せば、死ぬだの、殺すだの、殺害予告しかされていない気がする。
ちょっとからかったり、胸の話題を出すとすぐにグサグサしてくるし。あの辺り、アリアと共通して『キレるポイント』になっているのかもな。
従姉妹の理亜もそういった話題は苦手みたいだし。

「モンジって会長が好きなのよね?」

「うん? ああ。もちろんだよ」

「じゃあ、一之江さんは?」

「うん?」

「キリカちゃんは?」

「相手がオバケでも美少女なら大歓迎だよ!」

まあ、先輩やキリカは普通に友人や憧れている人っていう感じで、一之江に至っては相棒(パートナー)といった感じだけどな。

「そっか……そうなんだ」

音央は何か含んだように気にしている。
こんな状況でも、女の子にとって恋話は大事なのかもしれない。

「それじゃ……あたしは?」

「うん?」

音央の視線が俺の目を真剣に見つめていた。
不安……なのは確かだろう。強がっていてもやっぱり音央も普通の女の子なんだ。
だけど、どうしてだろう。今の音央は、いつもと少し違う気がす
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