episode7
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けね......」
グラスに並々に注がれた酒を、零さないようにチビチビと口を付ける。月明かりで黄金に輝いた酒がゆらゆらと揺れ動いていた。
量が半分くらいになるまでは、ずっと黙ったまま。先程の質問に答えたのは、それからだった。
「アーロン...。アンタは、ワタシのことをどう思ってる?」
「なんだ、急に」
「さっきの“どうした?”の答えだよ。あまり、よくない夢を見たんだ。...お母さんと、育ての親の夢」
アーロンは酒を飲むのを止めた。
「ワタシの出生は話したろ? お母さんが死んだ後、育ての親は行方不明になった、って。実は、違うんだ。育ての親は行方不明になったんじゃない。......死んだんだ。ワタシが、殺した」
「.........」
「驚いたよね...ごめん。アーロンは、同族殺しを嫌うって聞いたから黙ってたんだ。しかも、相手は仮とはいえ親だしね」
アンカーが育ての親を殺した理由は“生きるため”。
恋人のいる前では、優しい男であるフリをした。ぎこちない笑顔はそのためだった。10年も我慢した。育ての親は、アンカーに殺される前にそう叫んだ。
「大きくなるまで...高値で売れるまで待って、人間共に売り付けるために!」
それが、育ての親の最期の言葉。
「目の前の奴らを敵だと思った。殺されると思ったんだ。......気が付いたら、向こうが死んでいた。真っ赤に染まった手や服を見て、自分が殺したんだって分かった」
アンカーは、自分の手を見る。
過去に見た真っ赤に染まった自分の手を思い浮かべながら、あまり変わらないな...と苦笑する。
変わったのは手の大きさくらいである。
アーロンはその様子をじっと見つめる。
僅かに残った酒を煽るように飲み干し、アンカーを真っ直ぐ見つめ、その名を呼んだ。
「過去にお前がどんなことをしていようが、俺が口出しするつもりは無い。お前は、俺が認めた仲間だ」
「アーロン...」
「そ、それに...お前はッ」
言葉を詰まらせ、咳払いを繰り返す。
その先の言葉がアンカーにとって呪縛であるとも知らずに、不器用な男の言い回しは紡ぎ出される。
「お前はーー」
お前はーー
「ーー特別だ」
ーー特別(カイブツ)だ。
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