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竜のもうひとつの瞳
第十話
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更義理のお母さんに愛情求めるわけだ。でも、向こうはそのようには見ていない、と。

 「……母上は、某が邪魔だから置いていったのだと」

 「ストップ! そんなこと誰が言ったの」

 「真田の者達が」

 おいおい……何てことを言ってくれちゃってるのよ。
もしかして、子供の頃にそんなこと言われて育ってきたってクチかい?

 「一概にそうとは言えないじゃない。この時代、女が一人で生きていくのって相当大変なことなんだよ?
何か事情があって出て行かざるを得なかったのかもしれない。直接聞いたわけじゃないんなら、そう思うのは早いよ」

 「……しかし、何処にいるのかも分からぬゆえ」

 「こうやって立派に育ってくれて喜んでるよ! 十七だっていうのに屋敷も持てて、家人までいる。
私なんかこの歳になるまで自分の屋敷なんか持てなかったんだから。
しかも自分の、って言っても弟と二人で折半してやっと構えたくらいだしさ。
その若さでそんなに出世してればお母さんだって喜ぶよ」

 「そうでござろうか……」

 「そうそう! 絶対喜ぶって」

 ……根拠は丸っきりないけども。つか、佐助が随分と渋い顔してるのが引っ掛かるなぁ。

 でも幸村君はすっかり騙されてくれたようで、暗い顔が明るくなった。
単純だとは思ったけど、騙されてくれて良かったと思う。
だってさ、幸村君にその顔は似合わないよ、やっぱり明るく笑っててもらわないと。

 「小夜殿は良い母君になりそうでござるなぁ」

 突然言われたその言葉に、私は苦笑いしか出来なかった。母親、それは私には一生無理な話だもん。

 「う〜ん……だと良いんだけど、私、子供産めないからね〜……」

 幸村君のみならず佐助まで驚いて目を丸くしていたもんだから、つい余計な事を言ったかと少し反省しました。

 だってさ、折角明るくなってた空気がまた重くなっちゃったんだもん……。



 重〜い空気の中、目的の物を買って屋敷に戻れば、幸村君が突然私に向かって土下座を始めた。

 一体何事!? と思ったけれど、どうにも子供が産めないと言わせてしまったことを気に病んでいたようで……。
まぁ、気に病んでるのは分かったけど、別に土下座までしてくれなくてもいいのに。

 「申し訳ござらぬ! 知らぬこととはいえ無神経に」

 「いやいや、気にしなくていいからって。別に隠してることじゃないし、奥州じゃ知ってる人は知ってることだし」

 城の女の人達以外はほとんど知らないけども、つか、男として通ってるからそれはそうなんだけどもね。

 「しかし、それでは某の気が」

 「いいからって……変に気にされると、こっちも落ち込んじゃうから」

 「す、すまぬ……」


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