第十三話
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』だというのは、ちょっと無理がある。というか、鈴ちゃんのためにもしたくない。
「だから、今回のあれでも行けるように、『Dフォン』で『コード』を読み取る必要があると思う。それさえ出来れば、縁がより強くつながれて、『物語』にできるんじゃないかしら」
もっとも、ちゃんと縁があり、そしてカミナの『物語』となるものであれば、だけど。
そうテンがつなげた以上、もちろん鈴ちゃんが俺の物語ではない可能性もあるんだろう。だけど、なぜだろうか。俺は、彼女を俺の物語にできると思った。
「……じゃあ、『音楽室のクラリネット』のコードはなんなんだ?」
「……うぅ、分からないです」
「はっはっは。まあ、鈴嬢はまだそのロアになってから日が浅いからね。知らなくても当然だろう。……『コード』になるとしたら、そのクラリネットじゃないかな?」
絵さんが言っているのは、おそらく鈴ちゃんが持っているクラリネットのことだろう。今この部屋には、それ以外のクラリネットはない。
「え……絵さん、これ何ですか?」
「ああ、おそらくね。そもそも、この学校でピアノではなくクラリネットの噂が流れたのは、それがあったからなんだから」
絵さんが言うことには、どうにもそのクラリネットはこの学校が建てられた年からずっとある、そこそこに高い品らしい。それがあったからこそ、この学校ではクラリネットの都市伝説ができたわけだ。
「じゃあ……どうぞ、パイセン」
鈴ちゃんはそう言いながら両手に乗せたクラリネットを差し出してくれたので、それにDフォンのカメラを向ける。その瞬間。
ピロリロリーン♪
たしかに、コードが読み取られた。
「……読み取られた、な」
「……読み取られました、ね」
俺と鈴ちゃんはそう言ってから顔を見合わせて、そろって笑顔になる。見ると、テンと絵さんも笑顔になってくれていた。
よし、これなら。これなら、できる!
「パイセン、『音楽室のクラリネット』を、貴方の物語にしてください」
「ああ、もちろん」
シャラリラリーン。
ほらな?出来た。
「じゃあ、これからよろしくな、鈴ちゃん」
「はい!よろしくお願いします、パイセン!」
……ここからは、完全に余談なんだけど。
あれだけ渋い声で、なんともかっこいいと思えることを言っていた絵さんなんだけど、ずっと変顔だった。最初のころは慣れるまで笑いをこらえてないといけなかったし、慣れてからも変顔のまま笑顔になったりされると、笑い出しそうになった。あれはダメだろ。
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