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101番目の百物語 畏集いし百鬼夜行
第十三話
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いでいる彼女にあとは腕を合わせば抱きつけるというような距離まで近づいて、耳元で一言。
  「貴女よりうまいでしょう?だから……変わって?」
  翌日以降、その子は見違えるようにうまくなりました。まるで……入れ替わったかのように。


「と、以上がこの都市伝説の説明になります。まだちゃんと理解していないので分かりづらいですけど、それは勘弁くださいな」
「いや……大丈夫。ちゃんと分かったから」

 どういう都市伝説なのかは、分かった。そして、入れ替わるという都市伝説である以上、別の鈴ちゃんがいても不思議ではない。

「それにしても、凄いよな。それだけ昔から噂がある都市伝説なのに、ロアになったのはつい最近だなんて」
「いやいや、この都市伝説のロア自体はかなり昔からあるよ。それこそ、彼女が何代目なのか覚えてないくらいに」
「……それは、どういうことなのかしら?」

 と、テンが絵さんに尋ねた。俺は何一つ呑み込めていなかったので、テンの質問で分かりやすくなっていると助かる。

「えっと、何のことでしょうか?」
「それは……ううん、貴方に聞いても仕方ないわね。だから絵さん。貴方が答えてくれないかしら?」
「構わないとも。それに、このことがどれだけのことなのかを理解しているのは、(わたくし)だけだろうからね。とはいえ、説明するのも難しいことだから、そこは見逃してくほしい」

 絵さんはそう前置きしてから、さてどう話したものかと考え……話し出した。

「元々、『音楽室のクラリネット』という都市伝説は、純粋なロアとして発生したんだ」
「えっ……じゃあ、なんで今、鈴ちゃんがハーフロアとしてやってるんですか?」
「そう、まさにそこなのだよ。この都市伝説の、このロアの特殊性は」

 絵さんはどこか興奮しているようにも見える。もしかすると、そのことを誰かに話したくて仕方なかったのかもしれない。
 だから、そのまま聞くことにする。

「普通なら、入れ替わり系の都市伝説は入れ替わってからもロアであり続けるものだ。例としては、チェンジリングなんかがあげられる」
「いつの間にか子供が妖精と入れ替わっている。神隠しの一種ね」
「そうだ。そして、この都市伝説では入れ替わったものが『人間』になるのではなく、『妖精』のままであるというのは、分かるかね?」
「それは……はい、分かります」

 当然のことだ。どれだけ似せていようと、入れ替わっただけなのだから、その子に慣れるわけではない。
 だから、もしそんなロアがいて自らの物語を果たすのなら、入れ替わり一生その子として生きていく。人間ではなく、人間のふりをする妖精として。

「だがしかし、『音楽室のクラリネット』はそうではないんだ」
「どう違うの?」
「完全に入れ替わる。
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