第七話
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いです」
だってうちの弟、竜の右目ですよ? 無理ですから。呼んだら一発で素性バレますから。
本当勘弁して下さいってば。てか、政宗様が手放すとは思えないし、そんなことにでもなったら
大戦争の幕開けですよ。そんなの容認出来るはずもないし。
「? それならばまぁ……。ところで、小夜殿に任せたい仕事なのだが……」
少し何かを考えている様子で、幸村君は私に付いて来るようにと言った。
言われた通りに付いて行くと屋敷からどんどん離れて、隠されるようにして建てられた古屋に連れて来られる。
そこは小さいながらも道場のようで、中には訓練用の木刀やら棒が立てかけられている。
幸村君はひょいっと棒を二本手にすると、それを私の前で構えて見せた。
……何、この展開。はっきり言って嫌な予感しかしないんですけど。
「この幸村とお手合わせ願いたい!」
やっぱりそういう展開ですか!!
つか、何で私が君と手合わせしなきゃならんのよ。
任せたい仕事ってのと手合わせするのとどう考えても脈絡がないじゃない!
まさかと思うけど、武士をやらせようって腹なの? 女扱いしておいて?
「ちょ、ちょっと待って……どうして手合わせしなきゃならないの?」
「真田家ではどの程度武術が出来るかで与える仕事を決めておるのです。
それは女子供関係なしに昔から決められたしきたりでござれば、何人たりとも例外は許されぬゆえ」
つまり、稼げるような仕事がしたければ戦って勝てと。
……どんな家だよ、真田家は。わけ分からん。
と言ってもそれを拒んだところで仕方が無いので、腰に差していた刀を置いて代わりに木刀を手に取った。
こんなところで手の内晒すようなことはしたくないのだけど、なんて思いながら一つ小さく溜息をついて構えを取る。
この瞬間、幸村君の表情が更に引き締まったのを私は見逃さなかった。
「……出来る」
やっぱ構えだけでも見抜かれたか。無論、君も相当な使い手だってのは分かるよ、うん。
だって漂ってくる覇気が違うもの。本当に、その真っ直ぐに済んだ覇気は心地が良い。
戦場で戦ったら気持ち良いじゃないのかって思うくらいに。
「いざ、尋常に勝負!」
「応!」
そんな思いを胸に抱きつつ、どちらからとも無く突っ込んで激しい打ち合いが始まった。
私との打ち合いに嬉々として応じている幸村君に、私はほんの少しだけ苦笑していた。
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