VOICE(ルパン三世/ラヴリーP/VOICE)
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雪が舞っている時期だろう。
はらり、はらりと何かを悲しむように雪の結晶が積もっていく。
その時期からだったのかは分からない。
――ただ、何かを愛していたのは覚えていた。
**
俺は雪が降っている中、傘も差さず田舎町と呼べる町を歩いていた。
「――」
ふと、声に出した名前は雪の中に消えていった。
何がしたいのかは分からない。
俺はただ、ついていくだけだった。
言われた作戦、言われた経路、立てられた計画、その全てに肯定やら否定を続け、コンビを組んでいるだけだった。
「……――」
もう一度声に出してみる。
その声は渇いて、あの頃のような若さは持っていない。
アイツに届く声ではなくなっていた。
――お前は今、何がしてぇんだ?
飼い犬と言われるとそうなのだろう。
用心棒、殺し屋、そういった職業は雇い主が居てこそ成り立つものだ。
雇い主が居ないと俺は何もできない一匹の野良犬だ。
「待ってろ、なんて来ねぇなら言うなよ。全く」
雪の音にかき消されつつも俺は1人で呟いた。
足元は雪が積もって歩くことは出来るが、辺り一面真っ白だ。
窓から映るぼんやりした赤色は以前も同じように俺たちも浴びていた。
時にあの女がやってきて、自由気ままな女王の様に振る舞い、情報を提供し、計画を立て、裏切られる。
そんな時期もあったんだ。
帽子に積もってくる雪を払いながら、一面真っ白の道を歩き、1本の木を求めて丘まで歩いていく。
どうしてこんなところにアジトがあり、こんな木が立っているのかは聞いた事は無い。
聞いたところで誤魔化されて終る。
そういう奴なのだ、アイツは。
「なぁ、お前は何がしてぇんだ? この雪ん中、俺を呼び出しておいて何お前さんはぐうすか昼寝してんだ?」
木の目の前に立ち、話しかける。
木のすぐ隣は赤い屋根の小さな家。
持ち主が居ないのだから、大分前に勝手に入ったところ少し生活感が残っていた。
アイツにしては珍しいと思った。
場所を変えるときは全く生活感を漂わせることなく去っていく癖に、今回は机の上に置きっぱなしのコップや、読まれていただろう、歴史書や哲学書、そういったものがリビングのテーブルに置かれていた。
そこで、今まで生活していたかのように。
「……なぁ、聞いてるんだろ? そこに居るんだろ? 何とか言ったらどうだ?」
分かっている。
もう分かりきっている、この木はただの木なのだと。
神でもなければ悪魔でもない。
「なぁ――」
『もう止めろ』
ふと声が聞こえた。
俺が聞きたくて仕方ない声が、360°から聞こえた。
聞き間違えるはずも無い『相棒』の声が。
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