VOICE(ルパン三世/ラヴリーP/VOICE)
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あのナルシストで、自由気ままで、女にだらしなくて、裏切られても何ともないと言う顔で『裏切りは女の特権みたいなモンさ』と決め台詞を吐くアイツの声が、確かに聞こえた。
「おい! どこに居るんだ!! さっさと姿を現せ!」
どれだけ叫んでもアイツは返事をしない。
確かに聞こえたその声を求めて、木の後ろを覗く。
誰も居ない。
見えるのは灰色の世界と悲しそうに啼いてる海。
何を根拠に居ると思ったのだろうか、そろそろ戻る場所もないのに戻ろうかと思った。
それでも何処かに隠れているんだと密かに思い、ドアの目の前に立つ。
木製で出来た古びたドア。
何度か壊れたのだろう、修理の跡がある。
どこまでも器用な奴だ。
ギィィと音を立てながらドアを開け、リビングに向かう。
どうせソファで寝ているんだ、それかコーヒー風呂にでも浸かっているんだろう。
そう言い聞かせて俺は居もしない相手を捜す。
…………。
リビングは無音だ。
誰もそこに居ない、あの時の俺たちも、これからの俺たちも。
「そんな顔してねぇで、一杯どうよ? この酒結構いけるぜ」
過去の記憶が蘇る。
グラス片手にボトル片手にもう酔っている状態なのだが、それでも飲もうと誘ってくる姿を思い出して頭痛がする。
「おい……」
ぐらりと視界が歪む。
倒れる、普段なら何とかできただろう。
今の俺にはそれほどの余裕もない。
そのまま床に膝をついた。
コロコロと足元に何かが転がってくる。
小さい、輪は俺の足元で円を描きながら回り、パタンッと倒れた。
『見ろこの輝き。不二子喜ぶぜ』
『また不二子かよ。懲りねぇな、全く』
過去の記憶と今現在の場所がリンクする。
確かに俺たちはこの角度のものは何度も見ている。
転がってきた指輪を手に取り、立ち上がってもう一度辺りを見渡す。
家具、色、配置、確かに物は違っている。
モノクロカラーが赤色、木製テーブルがガラス製テーブル、物と色は違っているが、配置だけは変わっていなかった。
何故前来たときに俺は気付かなかったのか、それは馴染み過ぎていたからだ。
「おもしれぇ」
鼻を鳴らして放った言葉だった。
未だにアイツが何をしたかったのかなんてものは分からないし、分かろうとも思わない。
俺が組んでいる相棒は何を考えているか分からない奴だ。
久々に笑っているのが実感できた。
俺はイイ獲物を目の前にした時の笑みを零している。
身体中が熱くなる。
懐かしいと思える程の時は経っているのだろうか。
3年は懐かしい思い出として良いのだろうか。
けれど、そこには『懐かしい出来事』が起きた場所だ。
この家ではなく、前まで使って
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