第四十話 大阪の華その一
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美しき異形達
第四十話 大阪の華
薊達は大阪に着いた、そして着いてすぐにだった。
大阪の難波に出た、その難波の法善寺横丁でだ。
まずは夫婦善哉という店に入った、昔ながらの小路を進んでその中にある一軒の戦前の趣の和風の店に入って。
そこで善哉を注文した、その善哉はというと。
「噂通りだな」
「そうでしょ」
向日葵はにこりと笑ってその注文した善哉を見て言う薊に笑顔で応えた。
「ここの善哉はね」
「二つなんだな」
「そう、それで夫婦なのよ」
こう薊に言うのだ。
「織田作之助の小説にあるけれど」
「実際に織田作之助ってこの店来てたんだな」
「そうよ、これから行くお店にもね」
「自由軒にもか」
「あといづも屋にもね」
その店にもというのだ。
「よく通っていたのよ」
「そうだったんだな」
「奥さんと一緒に通ってたらしいのよ」
「このお店にか」
「そう、戦前ね」
「戦前かあ。かなり昔だよな」
戦前と聞いてだ、薊は目を瞬かせて言った。
「もう」
「そうね、七十年以上前だからね」
「大昔って気がするな、それだけだと」
「もうね」
「ああ、ただ」
「ただ?」
「横須賀は海軍の街だったし三笠とかあるからな」
日露戦争の頃の戦艦だ、東郷平八郎も乗艦していた。
「その頃と比べたらな」
「まだ新しいわよね」
「そう思うよ、それでその織田作之助さんがが」
「このお店にも来ていてね」
向日葵はいただきます、全員でそうしてから箸を手に取りつつ薊に話した。
「その自由軒やいづも屋にもなの」
「来ていたんだな」
「それでカレーとか鰻丼とか食べていたのよ」
「この善哉もか」
「奥さんと一緒にね」
「じゃあお好み焼きとか串カツとかたこ焼きもかい?」
薊は笑って大阪の代名詞と言われている料理を出した。
「織田作之助さん食ってたのかね」
「あっ、そういうお料理も」
「ビールと一緒にな」
「それはなかったわ」
菖蒲が薊の今の問いに答えた。
「そういったものは比較的新しくて戦後出て来たから」
「へえ、そうなのか」
「お好み焼きは戦前もあったかしら」
この辺りのことは菖蒲も今一つあやふやな感じだった。
「けれどそうしたものはね」
「その人食ってなかったか」
「多分だけれど」
「たこ焼きとか昔からあったんじゃなかったんだな」
「比較的新しいの」
「ビールはあったよな」
「あったけれど織田作之助はお酒は飲めなかったの」
菖蒲はこのことは知っていた、それで善哉を食べつつ薊に話した。見れば薊も他の少女達も既に善哉を食べはじめている。
「所謂下戸だったみたいね」
「へえ、お酒飲めなかったんだな」
「
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