第十幕その五
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「日笠さんが心移りなんかしたら」
「その時は」
「私達皆本気で怒るからね」
ポリネシアだけではありません、皆が先生を真剣な眼差しで見て言うのでした。
「わかったわね」
「だからそうならないうちに」
「今のうちにね」
「日笠さんをしっかりとね」
「その手に持つのよ」
「いいよね、そのこと」
こう強く言うのでした、しかし当の先生はです。
動物の皆の言葉を聞いて頷きながらもです、やはりマイペースでした。そのマイペースさのまま言うのでした。
「そこまでしないと駄目なんだね」
「そう、駄目なのよ」
「さもないと怒るから」
「これ本気だよ」
「もう先生もいい歳なんだし」
「結婚のことも考えないと」
「結婚して」
それで終わりではありません、むしろ結婚してからなのでした。
「子供も出来てね」
「皆で幸せな家庭も築いて」
「幸せにならないと」
「駄目だから」
皆はここまで考えているのでした、そして。
午後にです、先生はです。動物達が後ろにいる中で。
今度はヘラジカを診察する前にです、こう言いました。
「あの、日笠さん」
「何でしょうか」
「若し宜しければ」
こう前置きして声をかけるのでした。
「今度僕と」
「先生とですか」
「はい」
ここで言おうとしたところで、でした。二人のところにです。
大学の人事の人が一人来てです、こう言ってきました。
「あの、日笠さん」
「はい、あのことがですね」
「わかりました、ですから」
「すぐに行かせてもらいます」
日笠さんが人事の人に応えました。
「人事部まで」
「それでお願いします」
「先生、わかったみたいです」
日笠さんは先生のお話を聞く途中でその先生に言うしかありませんでした。
「虫歯の元凶であるお菓子を作っている人が」
「そうなのですか」
「先生はこのまま診察を続けて下さい」
ヘラジカ達のそれをというのです。
「私は人事部に行きますので」
「そうですか、それでは」
「すぐに戻ります」
喜びと焦りが混ざっている声でした、今回の騒動の元の人が見つかった喜びと早くその人が誰か確かめたい焦りです。
「ここでお待ち下さい」
「ではその間に」
「この子達の診察と治療をお願いします」
ヘラジカの皆を見てのお言葉です。
「そうされて下さい」
「はい、それでは」
先生も応えてでした、そのうえで。
日笠さんは人事の人と一緒にすぐに人事部がある校舎の方に向かいました。そうして残った先生はといいますと。
診察を再開しました、ですが。
その先生にです、動物の皆は残念そうに言うのでした。
「またね」
「チャンスがあるわよ」
「今のチャンスは小さなチャンスだから」
先生が直面しているチャンスの
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