§63 若返って見えるもの
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稼ぎ”くらいなら出来るかと」
「……あら弱気」
黎斗の発言に思わずドニが目を見張る。
「武器庫につなぐだけの呪力すら不自由してるのよ。つまり、今の僕に使えるのはこのワイヤーと徒手空拳のみ。おっけー?」
幽世の倉庫と繋ぐ事などそう簡単に出来ることではない。高度な技量と大量の呪力。その二つが合わさって初めて可能になる荒業なのだ。非常時に備えて「緊急時用ゲート」の術式を事前設置していたが、それもジュワユーズの召喚で使い切った。
「徒手空拳なんかこの身体でやるの、無理。間合いは違うし視点も違うし」
三歳児並みの身体になった黎斗は首を振りながらため息をついた。
「ジュワユーズが現世に来るとき、一緒に武器持ってきてもらえば……置き場がないな」
どのみち詰んでいた、ということか。
「れーとさんかわいーい!!!!」
思考する黎斗を遮ったのは、黄色い歓声と、柔らかい感覚と、甘い匂い。
「がふっ!?」
恵那に抱きしめられた、と理解するとほぼ同時に黎斗の意識は闇に落ちた。
○○○
「ごめんなさい……」
数時間後、意識を取り戻した黎斗の前には、債巻きにされたドニと正座する恵那の姿。
「別にいいよ。僕がひ弱だって再認識できただけだし……」
女子高生に抱きしめられつつ失神だなんて、普通の三歳児なら起こらないだろう。つまるところ、どれだけ黎斗がひ弱なのか、という話にしかならない。
「で、ドニはなんでそんなぐるぐる巻きなの?」
半眼で問えば、わが意を得たりとばかりに、
「聞いてよ黎斗。アンドレアったら酷いんだ。黎斗を弄る絶好の機会だと思ったから、油性ペンで落書きしようとしたら」
「こんのド阿呆があああああああああああああ!!!」
思わず手元にあったティッシュボックスを投げる。投げられたボックスは、ベッドを飛び越したところで落下した。ドニには全く届かない。
「「「…………」」」
痛々しい静寂が、辺りを包む。さっき気功をやった時とは種類の違う沈黙が。
「……なんかゴメン」
「むなしくなるから謝らないで!?」
黎斗の悲痛な叫びが響く。
「……とりあえず、アンドレアさん、ありがとうございました」
おかげで黎斗の尊厳は守られた。まぁなけなしの尊厳だけど。
「いえ……御身に被害が無く何よりです」
空気を引きずり動揺するも、すぐに取り繕うアンドレア。流石大人。一味も二味も違う。ドニの馬鹿とは大違いだ。
「黎斗のプライドはもうズタボロだけどね」
「お前黙れえええええええええええ!!!」
傷口をさりげなく抉るドニの言葉。
「しっかしホント致命傷だ
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