§63 若返って見えるもの
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符を浮かべる周囲に対し、苦笑していると初老の男性が近づいてくる。手にはチョークと幼児用の服を携えて。早い。
「なんかメッチャ高そうなんすけど……」
ブランドとかわからない黎斗でも一目で高級品とわかるレベル。上手に言葉にはできないけれど、なんか普段着ている服とレベルが違う。
「バザーでお古の服を買ってきている魔王様はれーとさんだけなんじゃ……」
恵那がボソリと呟くが審美眼がないものはしょうがない。馬子にも衣装、というが正直、衣類にお金をかけるならゲームを買いたい。それにリサイクルだ。素晴らしいではないか。
「その結果、大量のゲームが積まれているワケね」
「我が積みゲーは何人たりとも破れぬわ!!」
「黎斗様は衣類を買われないのですか……」
黎斗がそんな調子だから、彼の持つ服は大抵がバザーの戦利品だ。穴あきなどのワケあり品などは買い取って玻璃の媛やエルに縫いつくろってもらうという貧乏根性。黒衣の僧正に「庶民派魔王ですな」などと皮肉られるのもさもありなん。見かねた義母や義妹が服を選んでくれるようになるのはある種当然のことで。
「」
「……黎斗。僕が言うのもなんだけどさ。もうちょっとマトモにしない?」
「ドニから言われるとすごい敗北感を感じる」
なんだろう。欠陥人間から言われるとどうしようもない敗北感だ。憐みの視線がとても、痛い。
「まぁいいや、とりあえずお借りします」
それだけ答えて部屋に案内してもらおうとすれば。
「ねぇ、黎斗。今からすること見せてくれない?」
「……んー、別に構わないけど。静かにしててよ。あ、あとシーツ貸していただけます?」
「はっ」
丁寧な対応をしてくれるアンドレアにビクビクしながらも、目的の部屋まで来る。真っ白な部屋だ。窓がないそれが第一の感想だった。何のための部屋だろうか、荷物は何も存在せずに、天井に電球だけが等間隔でついている。高さはかなり高い。3,4メートルはありそうだ。そこまで思考を巡らせてから。改めて四隅を確認する。
「うん。まぁいっか。一応、みんな動かないでくださいね」
ワイヤーを、天井に張り巡らせる。複雑な幾何学模様を描くそれを、四隅と天井に。それから、シーツをワイヤーでつるす。チョークにワイヤーを結び付けて、部屋中に魔方陣を書きなぐる。
「よっと」
久しぶりすぎてうろ覚えだどうしよう。まぁ多分なんとかなるだろう。そんな感じで書きなぐる。辺の長さとか、角度とか、文字の止め跳ね払いとか。だいぶ適当だけど問題はないはずだ。
「出来た」
「……なんともまぁ器用なことで」
「…………」
「あはは……」
ドニが呆れて肩をすくめ、アンドレアは目を白
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