12話 「生命を取り落す時」
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「ッ!!」
クロエの周囲に渦巻いていた風が、突如として周囲の全てを吹き飛ばすように荒れ狂う。
戒めから解放されたように荒ぶる神秘の風が、都市の空に台風染みた空気の渦を形成した。
風圧で体が吹き飛ばされかねないその空気の壁に、必死に足を踏ん張って耐える。
最初は市場の中心に発生しただけだったその風は、周囲の空気や塵を巻き込みながら次第に大きく、大きく。小竜巻から竜巻へ、竜巻から更に上へ。周辺の建物の窓ガラスやレンガの一部がその威力に弾け、崩れる。
「こいつ……今までと規模が違い過ぎる……!」
「怖気づいたか。ついていないか。どちらでもいいが、貴様は死ね」
轟々と巻き起こるそれは――『大竜巻』と形容するしかない巨大な風の塊となった。
うねり、荒れ狂い、触れるすべてを天高くへ巻き上げる神の息吹。
ここまでのエネルギーを持っては、もはや術とは呼べない。
今までの術で制御された小さなものとは桁が違う、自然災害としての竜巻と同じ領域だ。天高く巻き上げられる塵の渦が、天高くまで舞い上がって月明りを遮る。
「ふむ………時間をかければもう少し大きくも出来るが、これ以上はお前以外を殺しそうだ」
理性が警告した。これは既に剣を振り回しているだけの粗暴なマーセナリーにどうこうできる段階を越えている、と。
もう、どうあがいてもこの怒涛の烈風には近寄ることも出来ない。これだけ膨大な烈風を発生させるということは、それだけ膨大な量の神秘を掌握しているということ。あのクロエと言う少年は、自らの意思で自然災害と同等の力をその手で弄んでいる。
神秘の掌握は、掌握範囲が広がれば広がる程にその代償として術の行使者に負担をかける。なのにクロエはその中心にいて息ひとつ乱していなかった。規格外の化け物だ。
だが同時に、本能はこう告げる。
この程度のそよ風で諦めるのか?お前だって息は切らしていないし、足も震えていない。
何より――こんなにも「楽しい」戦いを今ここで自分から投げて良いのか?
これは極上の馳走だぞ。おまけに勝てれば望む物も手に入る。
我ながらなんてどうしようもない男だ、とため息をついた。
「分かってはいたんだがな」
「――何だ、突然遺言か?」
「仮に遺言なら貴様のような餓鬼には託さんさ」
ずっと考えないようにしていた事がある。
魔物の行動は戦えば戦うほどにその単純なパターンが読めてしまう。ある程度経験を積むと、後はルーチンワークだ。だがヒトの戦士は違う。戦うたびに経験を分析し、少しずつ戦法や技を変えてくる。それと戦うのは変化とスリルに満ちてとても楽しいものだ。
そして――きっと相手を殺してしまうほどに死に物狂いなら、もっと楽しいだろうと。
「俺はマー
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