12話 「生命を取り落す時」
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り裂きつつ隙を作り致命傷を負わせるスタイルだろう。一撃一撃が人体の死角や関節構造上反応しにくい部分を狙っている。段平剣で応戦するが、取り回しが利きにくいためか足や腕に小さい傷を負う。このままではジリ貧だ。
裂け目から流れる血を「戦闘に支障を来すほどではない」と思った俺は、剣劇のリズムを崩してクロエの銀刀に強引に刃を当て、踏込と共に弾き飛ばす。弾かれた体勢のまま空に逃げたクロエは、直ぐにバランスを取り戻した。
「ちょこまかよく動くものだ。大人しく当たっておけば楽に済むものを」
「ほざけ、お前こそその鈍重な剣で良く動く……ならばッ!!」
そう言うと今度は自身を加速させ、残像が見えるほどの速度でで裂蹴を放ってきた。直線的だったので躱すが、風圧が背後にあった屋台を石畳ごと斬り裂く。足に纏わせた風の付加効果だけでこれほどの威力では、本当に首を狩られかねない。
躱した傍から方向転換して追撃を仕掛けてくる縦横無尽の蹴りを次々に捌くが、空間をフルに生かして苛烈に攻め立てるクロエ相手に防御に徹していては勝ち目はない。
少々危険だが、下手に避けて追撃されるより正面から迎え撃つ。
拳を握り、足を踏ん張り、空を切るその旋風蹴へ力任せに拳を叩きこんだ。
「ふんッ!!」
「ハァァァッ!!」
脚と拳が激突。足の纏う風の刃が、拳の風圧で弾け飛んだ。
互いの関節と筋肉がみしり、と悲鳴を上げ、足元の瓦礫が衝撃に耐えられず砕ける。
互いに完全に真芯を捕えた攻撃は、互いの攻撃の反動で弾かれる形で引き分けに終わった。
段平剣を重心に体を回転させ、バランスを取って着地する。向こうは空中で既にバランスを立て直していた。こちらが健在であるのが気に入らないとでも言うようにクロエが顔を歪める。
「……ッ、その腕をもぎ取ってやるつもりで蹴ったのだがな」
「お前の細足が今ので無事なほうが不思議だ。お前、本当にヒトか?」
今まで、同じマーセナリーとの訓練や魔物と散々闘ってきた中でも、ここまで自在に空を飛んでくる奴はいなかった。しかもあの小柄な体躯に秘められた想像以上のパワー。自分の5倍はある魔物を骨ごと両断できる自分の剣を受けて平気というのもおかしかった。
その問いに、クロエは皮肉気に嗤った。
「どうだかな。それに、お前だって『化物』だろう」
俺が――だと?
化物とは何の事だ。単なる実力的拮抗の事ではない含みを持たせたその物言いに眉を顰める。
俺の身体が普通ではないというのか。何がどう普通ではないのか、それも含めてこいつは知っているのか。クロエは黙り込んでじっとこちらを見つめている。
「……どういう意味だ?」
「まさか、本気で忘れているのか?なら――たった今教えてやろうッ!!」
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