12話 「生命を取り落す時」
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か」
クロエはそれに返答せず、代わりに今度は数マトレの竜巻を振り下ろすように発生させた。
竜巻はうねりながらも石畳を吹き飛ばす凄まじい風圧を纏ってこちらを追跡してくる。僅かにでも触れれば風に巻かれてズタズタに引き裂かれるだろう。全力で市場を駆け回りながら、竜巻をどう切り抜けるか思慮を働かせる。
通常、神秘術とは大気中にある神秘と+αの媒体に法則を付与して発動させる。
例えば風を飛ばす神秘術は神秘と大気を媒体に術で威力を上乗せするという形式で行われる。水なら大気中の水分、火の場合は特殊であり神秘に法則を付与して熱量に変換することで熱を持つ。このように術の発動は一つ一つに法則付与することで初めて実現する。
だが、高位の術士になると複数の神秘数列を連結させて多機能術式を発動させることができる。
あのクロエが扱っているのはそれだろう。彼は自分の周囲を纏う風から攻撃を繰り出している。恐らくあの風は攻守の両方に転用可能で、彼のイメージのままに動くよう定義付けが為されているのだろう。
一つ一つの術をバラバラに発動させるよりずっと効率的で、その代償に恐ろしく複雑な術式を理解する必要がある。
そしてその術式を持ち主の指令の下で代理処理するのが神秘数列というものだ。あの少年の剣にはファーブルのもののような掘り込みは見当たらないが、古代には今より遙かに高度な神秘数列技術があったのだ。
彼の持つ剣が古代武具だというのならば不思議なことはない。
同時に、敵に回すには余りにも厄介なのだが。
追跡を続けた竜巻は次第にその勢いを失いつつある。その隙を見計らい、身を翻して竜巻へ向かう。
自慢ではないが、『たかが複数のヒトを吹き飛ばす程度の風』ならば――剣の風圧で切り裂ける。
「いい加減にしつこいんだよ。――ぜやぁッ!!」
ゴウッ!と音を立てて横薙ぎに振るった剣から発生した衝撃が、竜巻を横一線に斬り飛ばした。同時に俺はその剣の勢いを殺さないまま足を軸に体を回転させ、背後から高速で迫っていたクロエの白刃を受け止める。
竜巻の発動と同時に機を伺っていたのだろうが、その程度は軽輩を察すれば造作もない。すぐに剣を弾いて距離を取り、クロエが再び生成した小竜巻の弾丸を側転で躱す。あちらもあれで決まるとは思っていなかったのか、すぐさま刀を煌めかせて追撃を仕掛けてきた。
至近距離まで持ち込まれたことで、戦いは剣戟に移る。
「風相手では戦いにくそうだったから、わざわざ出向いてやったぞ。さあ、そのそっ首を差し出せ!」
「欲しがるのはガキのやることだ!欲しいなら自分で奪ったらどうだ!?」
「言われずともッ!!」
小柄な体躯から繰り出される一つ一つの剣筋が異様に速い。
恐らくは速度と手数で切
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