12話 「生命を取り落す時」
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それが慢心だったのか、それとも単純に自身の命に重さがあるものと考えていなかったのか、その真実は今でも判然としない。
ただ、ひとつだけ理解していることがあるとすれば、それは――闇を切り裂く少年の声。
「宣言通り首は貰ったぞ。血みどろ騎士」
その瞬間、俺は確かに自分の身体からそっ首が斬り飛ばされる感触を認識した。
「あ、が……ッ」
見開かれる瞳、飛び散る赤い飛沫。
斬られたという事実を忘れそうになるほど鮮やかに滑った銀の刀。
驚くほどに美しく、そしてどこまでも残酷なる斬撃。
視界が激しく揺れる。剣を握っていた手の感触ごと、四肢の感覚が消えうせる。
そして、遠くに聞こえる声。
聞き覚えのあるような気がする、声。
「ブラッドさぁぁぁぁあああんッ!!!」
狩人に撃たれた鳥のように切なく悲痛な叫びが、俺の骸が転がった広場に木霊した。
擦れる視界が映したのは、その声の主ではなく色褪せた記憶の断片だった。
空の雲にさえ届きそうな巨木の下に広がる都市、その家の一つに住む女性。
声をかけるといつも最初は決まって怒っていて、怒った後は笑っている、そんな女性。
そしてその顔が――俺の記憶の中にいる誰かと被って見えた。
= =
「予定変更だ、今すぐその首貰い受ける」
「やってみろ、 黒羽坊や。取れるものならな」
挑発としては少々露骨だったが、どうもあのクロエを名乗る子供は見事にそれに乗ったらしい。
銀色の刀を掲げ、静かに唱える。剣の柄に装飾された翡翠色の石が眩い光を発し、クロエを纏う風が大気を裂くよう鋭く研ぎ澄まされる
「わが剣に宿りしZの胎動よ。逆巻く風雲を我が意志の下に掌握せよ」
逆巻き――自然の法則からの乖離を意味し、術師が好んで使う詠唱だ。
言葉通りに荒れ振るう風を掌握したクロエは、コートをはためかせながら掌に光を収束させ、放つ。
「疾ッ!!」
強い光は極小の竜巻を形成して、弾丸のように空を抉るように打ち出された。
長年の勘が危険を察知し、咄嗟に体を逸らして躱す。
狙いが逸れて地表に衝突した竜巻は街の石畳を抉り飛ばした。
更に矢継ぎ早に発射される風を躱しながらも、その威力に驚愕する。風というものが石を粉砕するほどの威力を持つなど聞いたこともない。神秘術によってかなり威力が増幅されている。
市場に残されていたテントや椅子ごとバラバラに粉砕しながら飛来する風を躱しながら、術の突破口を探すように思案を巡らせる。
「この術……周辺にある風に法則を付与して飛ばしている物ではないな」
「……………」
「情報を渡す義理はないということ
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