11話 「告死の黒翼」
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の台詞を吐きたくなった日はない。
呆然と彼の背中が見えなくなるまで立ち尽くしていると、後ろの扉が突き破られた。
「ちょっとちょっとぉ!さっきの殺気は何事よぉ!間違えて薬の調合間違えちゃったじゃない……って、ナニコレ!?」
「あ、アイシャさん……!」
この宿で「はぐれ薬師」として活動しているアイシャの姿がここにあった。その髪とエプロンが少し焦げている所を見ると、薬の調合に失敗して爆発が起きたらしい。だが今はそれ所ではない、とファーブルは今起こったことを必死に説明する。……禁書の話は隠して。
「大変なんです!いきなり暗殺者が現れて、ブラッドさんが大怪我を!しかもあの人傷も塞がってないのに暗殺者を追いかけて外に……!」
「え、さっきの殺意ってば想像以上に大事じゃない!!………あれ?」
事情を聞いて目を丸くしたアイシャは、そこで部屋を見渡してあることに気付く。
「でも大怪我って言う割には―――この部屋全然血痕が残ってないけど」
「え――?」
部屋の床やカーペットに滴り落ちていた筈の血は、まるでその存在すらなかったように一滴残らず無くなっていた。
「まさか……そんな筈は!確かにあの時ブラッドさんは出血して……」
見間違いかと思い周辺をよく見たが、壁が切り裂かれた際の瓦礫と埃以外、血の痕跡は何も見つからなかった。
(――一体、何が起きた?血がひとりでに動いて消えたとでも言うのか?)
= =
傷の痛みが治まってきたな、と一人ごちる。
今までそれなりに傷を負ってきたが、気が付いたら治っている。周囲はその傷の再生速度を気味悪がるが、次第に傷すら負わずに敵を屠る姿を見て疑問すら抱かなくなっていった。そう言う体質なのだ、と自分でも納得している。
一時期は「自分の血が足りないから相手の血を啜っている」などという噂も流されたものだ。
しかし――クロエという少年は速い。
俺が全速力で町を走っているのに対し、クロエは碌にその翼も使わず屋根と屋根の間を飛び越えながらこちらの様子を伺っている。恐らくこの時間帯はもぬけの殻になる「キャラバン市場」へ向かっているのだろうと推測する。翼種である以上は動き回れる広い空間を戦いの場所に求める筈だ。大型の剣である段平剣を操るこちらとしてもその方が都合がいい。
途中、飲んだくれた酔っ払いや露店の連中が何事かと目を丸くしたが、気にせずに追跡を続ける。もとより構っている暇など無いし、興味もない。
やがて視界が晴れ、がらんどうな広場に到着する。
中心部には噴水、そして普段はそれを囲うようにキャラバンが食料品を置いている棚やかごが放置されていた。ここは定期市のため、市が開かれれば賑わうが撤収してしまえばまるで
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