11話 「告死の黒翼」
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つくづく)嫌な縁がある。ファーブルの言葉もあまり慰めにはならない。
「どちらにしろただのガキじゃないのは明白という訳か。存在に全く気が付かなかった」
「僕もです。マーセナリーの中でも別格の気配察知能力を持つブラッドリーさんにも気づかれずに部屋に入り込むなんて……自分の命があることが驚きです」
「審査会の隠密室の監視を潜り抜けて来たのか、それとも公式の殺し屋だから許されたのか……どちらにしても厄介極まりないな。あいつから目を離すなよ」
マーセナリーの身柄はある程度審査会が管理しているが、外で恨みを買ったマーセナリーやマーセナリー同士で生まれた恨み辛みを殺し屋に託すヒトも世の中には存在する。俺自身も存在を疎まれて殺し屋を差し向けられた経験があった。
だが、目の前のこいつはそんな暗殺者とは決定的に違う所がある。
それは闇夜に爛々と輝く瞳。
殺意を通り越し、当然では済まされぬ威圧感を纏う絶対強者。相手を必ず殺す事だけを決定して動くような、ヒトの感覚から隔絶された高みに達する意思。
これほどの瞳をするヒトがこの世に果たして何人存在するだろう。いったい今までどのような想像を絶する環境下で生きて来たら、この子供のような瞳を宿すのだろう。ヒトと言う種族の業の深さを垣間見た。
状況を分析し、素早く考えを巡らせる。
あのクロエと名乗る少年はファーブルを狙っていた。なら狙いはファーブルと考えるのが妥当だ。
だが同時に「禁書を抹消する」とも言った。だとしたら狙いは禁書、もしくは禁書とその内容を知る者といった所か。俺も恐らく候補なのだろうことは想像に難くない。
だが、クロエは最初の不意打ちからまだこちらに仕掛けてきていない。傷を負わせた剣士と丸腰の術師が相手でも油断する気はないという訳か、と苦々しく舌打ちする。
せっかく記憶の断片を取り戻せそうなのだ。
暗殺者か何か知らないが、こんな所で邪魔をされてたまるものか。
「お前の狙いは本か?それとも本の内容を知るもの全てか?」
「……………」
クロエは何も言わず、ただ俺の顔を見て何かを呟く。
「……他人の空似、か?だが纏う気が似すぎている………それにこの刺すような気配……だとしたら貴様は……やはり無関係ではない。試してみるか――」
1人何かを結論づけたクロエの姿が、次の瞬間に掻き消えた。
この狭い空間で完全にその存在を見失うほどの速度など、今までのリメインズでもお目にかかったことがない。加えてこの暗闇による視界の悪さ。刃がどこから迫って来るか、全く予測がつかない。
――直感と反射神経を総動員して、俺はその影が向かう先に細剣を振った。
「……ッ!!」
刃の先端に、ほんの微かに何かを斬った感触。
斬ったのはクロエの
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