11話 「告死の黒翼」
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殺人行為は、どの国どのヒト種どの宗派にいても悪徳であり、ヒトの犯す最大の罪である。
だがこのロータ・ロバリーに生きる者は全てが善なる存在とは言い難く、ヒト種は力をつければつけるほどにその醜悪なまでの傲慢を肥大化させてゆく。その傲慢は、ヒトの心に宿った鬼がそうさせる。
鬼とは力の象徴。暴力の象徴。理不尽を表す記号。
故に、ヒトの中に生まれた鬼を殺して善を守る為、この世界には殺し屋と呼ばれる集団が存在する。冒険ギルドよりも危険に、マーセナリーよりダーティに、彼らは夜の暗闇に紛れて害悪を抹消しエレミアの慈悲を否定する。
悪にとっての悪とは、善にとっても悪。ゆえに悪は表に顔を出さない。
その暗殺集団の中にあって一際特異で、一際恐れられる者たちがいる。
構成メンバーの全員が翼種。宵闇に月下を舞い、鬼の首を斬り落とす。
超国家条約に於いて、秩序をいたずらに混乱させるその「鬼」を滅するために女神の代理人たちに認められた、この世界で唯一の「正式な必要悪」。
目をつけられること無かれ。
目をつけられた者、生きること無かれ。
目をつけられし鬼、決して見逃すこと無かれ。
その頂点に立つ者は、嘗てヒト種を守るために戦いの矢面に立ち、連合に数多のハロルドの首級を持ち帰った悪の英雄。
「アサシンギルド『鬼儺』が統領――クロエ。その禁書、抹消する」
月下に現れたその少年に、ブラッドは剣を向けた。
斬られた背中の傷が血液を吐き出し続けるが、身体は動くらしい。熱が消えていくような寒気を抑えて、ファーブルを庇う形で構える。呆然としていたファーブルも我に返り、相手を食い入るように見つめた。彼の額に一筋の汗が流れ落ちる。
「黒い翼……黒い髪……月夜に煌めく銀の刀……まさか、本物の鬼儺……!?」
「殺し屋にして英雄とでも?物騒なガキだ、親の顔が見てみたいな」
「い、いえ……本物はもう40歳近い筈です。後継者かもしれません」
翼人の寿命は基本的ヒト種とほぼ同じ、つまり100歳前後だ。老化も当然同じペースで訪れる。二代目か息子と考えた方が自然だろう。見覚えがある気がするのは、彼と初代のクロエが似ている所為かもしれない。記憶の中の少年と目の前のそれが同じである証拠はない。
だが、殺気に鋭いマーセナリー2人に悟られず部屋に入り込んだその手腕は本物の暗殺者のそれだろう。部屋の中に吹く風も、恐らく彼が神秘術で発生させているものだ。
風ということは術の運命数は「Z」。使いこなすのは難しいが、慣れれば圧倒的な機動力と自由度で戦況をかき乱す厄介な属性だ。
どうやら最近の子供と言うのはどいつもこいつも物騒らしい。大砲をぶっ放す子供の次にヒト斬りとは熟(
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