三十八 開幕
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分のことは自分でするしかなかった。
指摘してくれる人などいないからやること為す事失敗し、何度も間違えた。そのたびに「そんなことも知らないのか」と幾度も馬鹿にされた。
それ故、訊くことが怖かった。頼るという行為自体が悪いことだと考えるようになった。
しかしながら、うずまきナルトは親切に教えてくれた。馬鹿にしたり、「そんなことも知らないのか」と嘲笑ったりしなかった。
そうしてようやく気づく。自分に勇気が無かっただけなんだと。己自身が白黒の空間に閉じこもり、とっくに訪れていた春も迎えようとしなかった。自分から訊こうとしなかっただけなのだと彼女は今になって知った。
頼る行為は甘えであり、悪いことだという思い込みを、ナルトが塗り潰してくれたのである。自身と似ているようで違う、あの春の日差しの如き笑顔で以って。
「あとさ、見舞いに来てくれたらしくって花貰ったんだってばよ。オレってば寝てて気づかなかったんだけど…」
修行に明け暮れる日々を送っていたナルの許に、シカマルが小難しい顔でやって来たのだ。いきなり花束を渡され、何事かと思ったのだが「うずまきナルトからお前に、見舞いの花」と簡潔に言い渡され、納得する。元々植物が好きだったためナルは喜び勇んでその花を受け取った。その時のシカマルの機嫌がなぜか非常に悪かったのだが、どうしたのだろうか。
花束それぞれの花を挿し木にする。運のいいことにほとんどの花が根付いたので、殺風景だった彼女の部屋は今やとても華やかだ。それこそ春が来たように。
「すっげーいい奴なんだってばよ。で、さ。ラーメン一緒に食べに行く約束したんだってば!」
そう言ってはにかむ。ナルの笑顔を目の当たりにしてヒナタはどこか不思議な心地がした。
ナルが嬉しいと自分も嬉しい。何時もならそう感じるはずなのに、今回はどこか違った。心の片隅で湧き上がったモヤモヤとした想いが引っ掛かる。
「……?」
だがそのモヤモヤを振り払い、ナルに訊ねられた術について教える。幸いなことにそれは下忍レベルのものだったので、座学で優秀だったヒナタは親身になってその術を解説した。
ヒナタの丁寧な説明のおかげである程度理解出来たナルが、バッと拳を高く上げる。
「サンキューな!ヒナタが友達で本当に助かったってばよ!!」
憧れの人の口から友達と言われ、ヒナタの顔が赤く染まる。口をぱくぱくと開閉する彼女に、ナルは背を向けた。
「じゃ、オレってば試験行ってくる!オレがネジぶっ飛ばすの、お前もぜってー見に来いよ!!」
振り向き様に元気よくそう告げると、ナルは意気揚々と試験会場へ向かった。
その足は演習場に来た時とは違って軽やかなものだった。
「サスケはまだ見付からんのか?」
会場を一望出来る観戦
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