第6章 流されて異界
第112話 失点
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向きにひっくり返って仕舞うカニ。せめてもう少し打球に近い位置で仰向けに倒れたのなら、俗に言うバンザイ、と言う状態のなでしょうが――。打球自体は無様なその姿を嘲笑うかのようにヤツの遙か頭上を越え、サッカーの決勝戦が行われているグラウンドを転々と転がって行く状態。
その時になって、ようやく出遅れていたセンターのさつきが大きく回り込んで転がって居た白球に追い付いたのですが……。
中継に入った俺にボールが戻って来た時には既に、ホームベース横で主審が大きく両手を横に広げて居た。
九組の一点先取。……と言うか、この球技大会が始まってからこれが最初の失点と言う事。今までずっと大差で勝利して来た為に、ハルヒ自身が打たれたヒットも数えるほど。ついでに言うと、逃げると言う選択肢も存在しない以上、フォアボールすらないので――
「何やっているのよ、ヘタクソ!」
マウンド上で醜態を晒したライトを指差しながら怒鳴って居るハルヒ。確かに、ヘタクソと言われても仕方がない動きだったとは思いますが、それでも一般的な男子高校生の動きでは、九組のトップバッターの打球を捕球する事は難しかったでしょう。
「ドント・マインドや、ハルヒ」
一点ぐらい取り返してやるから気にするな。
そう言いながら、両手でボールに付いた土を落とし、ハルヒへと手渡す俺。確かに負けず嫌いは悪い事じゃないけど、起きて仕舞った事を非難しても始まらない。ましてライトとレフトに穴が有るのは最初から判って居た事。今更、そんな事を言っても詮なき事でしょう。
「何よ、エラそうに」
それなら、この裏の回に絶対に点を取りなさいよ、アンタが!
はっきり言って八つ当たりも良いトコロの台詞を俺に対して投げつけるハルヒ。
ただ、
「へいへい、仰せのままに」
逆らっても意味はない。それに、早いウチに追い付いて置くのは悪い事でもない。
まして、この勝負に負けて、俺が奴らに引き渡される、……と言う事の本当の意味が分からない以上、能力の出し惜しみをし過ぎて負けるのは問題がある。
そう考えながら、踵を返して定位置に戻る俺。ライトのカニには軽く右手を上げて気にするな、と一言だけ声を掛け、センターからこちらを難しい顔で見つめるさつきとは軽く視線のみの交錯で終わらせる。
「プレイ!」
俺が定位置に戻り、止まって居た試合が再び動き出した。
九組の二番バッターが右打席で構えに入ると同時に、主審が試合再開の宣言を行う。
しかし……。
身体自体は自然と打球に対処出来る形を取ってはいる。しかし、俺自身は未だ先ほどの不可解な現象に心の大部分を割いている状態であった。
そう。普段の状態なら例えライトの頭上を越えて行く打球であったとしても、セ
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