第19話〜蒼穹の大地〜
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用の住居へ荷物を置き、ガイウスの実家を訪れたケイン達は、そこでウォーゼル一家と共に夕餉(ゆうげ)を囲んだ。岩塩と香草で包み焼きされたキジ肉や、羊肉を炙って串焼きにしたカバブ、ノルドハーブを用いた消化に優しいお茶など、ノルドならではの料理をご馳走になった。疲労に効く滋養の高いものが多いらしい。五臓六腑に染み渡るとはまさにこのことだろう。
「このノルドの地は、ある意味、とても自由な地だ。帝国人である君たちには新鮮であり、不便でもあるだろう・・・だが、君たちに関係がないわけではない」
「・・・ドライケルス大帝が獅子戦役の際、ノルドの地で挙兵したという話ですか」
ノルドのお茶を味わいながら、ラカンの話に聞き入る一同。ガイウス同様、寡黙な人のようだが、彼が発する言葉は、どこか重みを感じさせる。ラカンの一言に、ケインは相槌を打った。帝国人ならば子供でも知っている歴史的な逸話だ。
「ああ、ノルドの民の間でも伝承として語り継がれている。そして獅子戦役が終わった後、ノルドの民は、彼の継いだ帝国と長きに渡る友情を誓い合った」
その善き関係が今日に至るまで続いている、と。確かにノルドは帝国の領土ではない。あくまで対等な関係なのだろう。リィンの言葉を借りれば、共に友情を誓い合った隣人同士。
「しかし、昨近、カルバードという東の大国が高原の南東に進出してきた。東に住む一族などは交流を深めているようだが・・・どうやら、それが少しばかり緊張をもたらしているようだな」
その名前を聞いた途端、ケイン達の表情は険しいものへと変わる。カルバード共和国。帝国の宿敵とも言える存在だ。ノルドの領有権を双方で争ったりするなど、政治的な対立も未だに根強い。
「1202年に結ばれた『不戦条約』も法的拘束力は皆無ですからね・・・まぁ、今すぐどうこうってことにはならないと思いますよ」
「ふむ・・・最近もクロスベルで大きな事件が起きたそうだが、帝国と共和国の対立が根本にあったようだ」
心なしか、ガイウスの表情が強張っているように見える。故郷を脅かす可能性のある問題であるためだろう。そんな息子の様子を知ってか知らずか、再びラカンが口を開いた。
「まあ、とはいえノルドは双方にとっても辺境の地だ。監視塔も建っているがさほど心配する必要はないだろう。あまり気にせずに特別実習に集中するといい」
実習の課題を用意しているらしいラカンは、明日の実習について簡単に説明する。ノルド高原は帝都へイムダルなど比較にならないほど広大だ。午前中は、実習の範囲を南西部に絞るべきだと言う彼の意見にも頷けた。そして午後から残りの課題を渡すので、昼餉のころには戻ってくるようにとのこと。南西部と言えば、集落までゼンダー門から馬を走らせてきた場所だが、あれだけでも馬鹿にならない面
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