第19話〜蒼穹の大地〜
[3/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
、正規軍の中でも五指に入るほどの名将だからな。<<ヴァンダール流>>を代表する剣の達人でもあるし」
彼と自然に握手をするケインに、ガイウスが疑問を口にする。知り合いというよりは、ゼクスが有名なので、一方的に知っているだけである。
「ハハ、そう持ち上げられるほど大層な人間ではないのだが」
ケインの簡単な紹介を謙遜したゼクスは、「おぬしらの話も聞きたかったが」と心底残念そうな様子ではあったものの、今日中に帰りたいのならそろそろ出発した方がいいとガイウスに言う。時間が時間だけに仕方がない。現在は夕刻だが、日没してからでは視界が悪くなってしまう。
「すみません。お願いしていた件は・・・?」
「うむ、用意してあるぞ」
どうやらガイウスは移動手段の用意を頼んでいたらしく、「付いて来るがいい」と言うゼクスに導かれるまま、一同は門の外へ出た。
「こ、これは・・・」
「絶景、としか言えないよな」
夕日に映える緑の大地は、無限に広がっているようで、まるで燃えているかのように見える。帝国北東、アイゼンガルド連峰を越えた先にある、峻厳な高原地帯。蒼穹の大地、ノルド高原。ガイウスの生まれ育った故郷にして、今回の実習地だ。
「フッ、気に入ってくれたようで何よりだ」
その雄大な光景にA班メンバーは言葉を失い、しばし呆気に取られていたが、ガイウスの一声で我に返る。それと同時に彼の方を見やると、5頭の馬がそこにはいた。ノルドの遊牧民であるガイウスはもちろんのこと、ケインやアレス、リィン、アリサには乗馬の経験があるため、この広大な地で馬ほど速く手軽な移動手段はないはずだ。乗馬経験が無いらしいエマは馬の負担を考えて、アリサの後ろに乗ることに。最後に、軍の測量によって作成された地図をゼクスに手渡された。ゼンダー門や遊牧民が住む集落などの位置関係が人目で分かる。実習で使うということだろう。何から何までお世話になりっぱなしな中将へお礼を言い、ケインたちは馬を走らせた。
「着いたな・・・」
「ああ・・・ここが、ガイウスの故郷か」
先ほどより薄く感じられる夕刻の日差しに照らされるノルドの集落は新鮮に映ったが、どこか郷愁を誘う光景だ。
「まあ、この場に定住しているわけではないが・・・夏から秋にかけては北へと移動するのが常だ」
「なるほど、遊牧民だものね」
「だからああいう、変わった建物なんだよな?」
「ああ、厚手の布でできた移動式の住居でな」
「確か・・・ゲル、じゃないか?」
ケインが住居の名称を口にすると、驚きで目を丸くするガイウス。
「ああ、その通りだ。詳しいな」
「昔、ロヴァースさんから聞いたことがあったんだよ。帝国北東の果て、大自然と共に生きる遊牧民の集落がある、ってさ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ