9話 「シークレット・エイト」
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ドリーさん。この話は今日の調査が終わった後で構いませんね?」
「………ああ」
後ろにいたカナリアたちが何事かと首を傾げたが、2人はそのまま淡々と仕事をこなした。
その日は予定していた捜索範囲を上回る場所を捜索できたが、めぼしい発見は無かった。持ち帰ったのは古代の物と思われる用途不明の道具と古代言語で書かれた謎の書物が幾つか。これに価値が付くかは後の鑑定結果次第といった所だろう。
途中様々な魔物に襲われたものの、どれも難なく倒すことが出来た。
手に入れた物品は全て審査会に提出され、後日その鑑定結果と報酬が手渡される。がらくたが大金に化けたり、苦労して持ち帰った物に価値がつかなかったりと報酬は安定しないが、それもまたマーセナリーという仕事の運命。ただ、義務を遂行すれば最低ラインの報酬は出してくれる。
しかし――いつものように魔物を狩って返り血に濡れたブラッドリーは、水浴び場でそのべったり張り付いた血糊を水場で落としながら思う。
今日はあまり魔物を斬り殺す事に気が高ぶらなかった。高揚はあるにはあったが、それ以上の気がかりが勝っていたからだろう。気が付けば自分が誰なのかという問いばかりを繰り返している。あまりに意識が傾きすぎてカナリアに心配されてしまうほどだった。
(俺はやはり、自分が何者か知りたのだな……)
むしろ、今まで疑問を持たないように目を逸らしていたのかもしれない、とさえ思う。
自分は何者か。何所から出でて、何所へと流れゆくのか。
長い年月を経てその真実は既に失われているのかもしれない。
それでも――知りたい。
今まで抱いてきた乾き、疼き、夢――その答を。
= =
『お前がそんな危険な男だったとはな。私の見込み違いだったようだ』
――違う。
『おい、近寄るなよ異端者!俺まで異端審問の道連れにする気か!?』
――違うんだ。
『学友?冗談言わないで。アナタみたいな狂人と私たちがなんて……あり得ない』
――聞いてくれ。
『出て行け!今すぐに……この、罪人!アンタみたいな奴だって知ってたら……!』
――僕は、僕はただ。
『どこでもいいからリメインズに行ってマーセナリーになれ。罪から逃れるならそれしかないだろう』
――学問を追求して、真実に辿り着きたかっただけなのに。
誰もかれもが僕を見る。蔑むように見下す。昨日一昨日まで笑顔で迎えてくれた人々が、器を返すように罵詈雑言を浴びせ、口々に僕の存在を否定する。今までの人間関係が、今までの信頼が、今までの実績が、目の前で踏みにじられるように消えていく。
この町での僕の存在とはなんだったんだ。
僕の才能も努力も、何故踏みにじられなけれ
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