暁 〜小説投稿サイト〜
リメインズ -Remains-
9話 「シークレット・エイト」
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る。
だがその度に奇妙な違和感を感じる。何か足りないような――そう、誰かがその中から欠落しているような錯覚。6人以上、この集団の中にいた様な気がする。

 これも何かの手がかりなのだろうか。俺が捨て去った記憶に関係があるのだろうか。その真相を究明したいという欲求と、触れてはいけないような忌避感。その二つがまた俺を縛り付ける。
 六天尊は天下の英雄としてその知名度も実績も世界中に轟いているが、彼等が実際に躍進したのは30年も前の事であり、中には現役を退いている者もいるだろう。そんな過去の人間と自分に関わりがあるとは考え難い。記憶違いだと考える事も出来るし、単なる覚え違いかカン違いの可能性もある。

 だが、もしもそれが勘違いでなかったとしたら?
 俺は年を取っていないようだ。だから俺が六天尊の活躍した30年前の退魔戦役に参加していた可能性は否定できない。そこで俺は六天尊について何かを知り、そして記憶を失ったのだろうか?
 まさか――こんな所に手掛かりがあったのか?
 内心では半信半疑だったが、この突拍子もない発想を完全否定する材料がないのも確かだった。

「足りない」
「え?」
「前から思っていた。六天尊の名前を聞くと、名前が欠落している気がする。何故だろう」
「………欠落、ですか。そうですね――恐らく数学賢者ゴルドバッハではありませんか?」
「ゴルドバッハ………神秘術の権威だったという」
「ええ。彼は戦役で大きな貢献をしていますからね。特に術師達の間では彼を神聖視する者もいるほどです」

 ゴルドバッハはゼオムという種族の出の神秘数列研究者だ。その神秘術知識において右に出るものがいなかったことから、数学賢者の名が冠された。
 ゼオムは普段外界から隔絶された天空都市に住んでおり、地上に殆ど干渉しないものの神秘数列に置いては世界随一のものを有している。そんな環境下で彼は退魔戦役の際に地上にアドバイザーとして降りたち、敵を打ち破るために数多くの策と神秘術を託したと言われている。
 そんな彼も、終戦直前に魔物の強襲を受けて還らぬヒトになった――と聞き及んでいる。

「戦時資料によると、彼は六天尊と行動を共にすることが多く、特に黒翼のクロエと猛将シグルとは親しかったようですよ。戦時を知るヒトの中には彼も含めて七天尊だと主張する人もいると聞きます」

 ゴルドバッハ。そうだ、彼もその6人と共に並んでいた気がする。パズルのピースが一つ埋まった。だが、まだ何かが欠落している。

「……いや、やはり抜けている」
「――ブラッドリーさん。本当にそう思いますか?」

 不意に、緊張が走った。ファーブルの方を見やると、その表情は非常に硬い。
 この表情、こちらを疑っている顔ではない。何かを知っている表情だ。

「ブラッ
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