暁 〜小説投稿サイト〜
リメインズ -Remains-
9話 「シークレット・エイト」
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「カナリアさんも結構謎多き人ですね」

 ガゾムという種族は火山や山脈などの鉱石地帯を中心に住んでおり、特に彼等が最も多く住むと言われる鉄工大国エディンスコーダは技術大国としても有名だ。あそこは天空都市バベロスとアーリアル王国に次ぐ三大国(ビッグスリー)の一角だ。
 お国柄は技術馬鹿とも言えるほどものづくりが好きで、また商魂が逞しいため世界中にキャラバンが回っている。そして、少なくともファーブルは戦いを生業にするガゾムの話など噂ですら聞いたことがない。基本的に自衛を除いて攻勢に出る事はない種族とマーセナリーの職種は不釣り合いだった。

「武器売りのガゾムなら見たことがありますが、傭兵のガゾムなんてあのフィリップスくらいしか知りませんよ」
「……フィリップス?」
「おや、ブラッドさん知りませんか?退魔戦役で華々しい戦果を挙げた英雄たち、六天尊(グローリーシックス)のフィリップスですよ。彼は義勇兵でありスポンサーでしたからね」
「……あ、ああ。確かあだ名は大砲王、だったか。当時まだ未成熟だった大砲の鋳造技術を発展させて、陸上戦艦を乗り回して魔物を屠ったんだったな」
「そうです。今は表舞台に出ていませんが今でも機械(マキーネ)の第一人者として世界の技術者に尊敬されています」
「………………」
「……どうかしましたか?」

 彼にしては珍しく、少々ぼうっとしていたようだ。
 今日は朝から珍しい事が続くな、とファーブルは不思議に思った。

「足りない」
「え?」

 ぽつりと彼が呟いたその言葉に立ち止まる。
 そして続く言葉がファーブルのある忌まわしい過去を思い出させた。

「前から思っていた。六天尊の名前を聞くと、何人か欠落している気がする。何故だろう」


 結果から言えば、それは考えてはいけない疑問だった。
 ブラッドにも、そしてファーブルにとっても。

 二人が後悔するのは、それから更に後の事となる――。



 = =


 
 フィリップス。その名前を聞いた時に、俺は既視感を覚えた。
 六天尊の事はよく聞く。戦争を終結に導いた英雄だと。うち一人は既にこの世を去っているが、その栄光は30年経った今でも戦士たちの語り草になっている。


 退魔戦役に於いて、八方の極地にまで英名轟かす六の英傑在り。
 魔を狩り、魔将を討ち、その尊厳たるや天にも届かん。


 麗しき女聖騎士、エルディーナ。

 黒翼の鬼儺(おにやらい)、クロエ。

 偉大なる大砲王、フラッペン。

 神の腕を持つ男、ジンオウ。

 国潰しの白狼女帝、ネスキオ。

 今は亡き鉄血の猛将、シグル。


 その名を聞くと不意に懐かしさのような、彼らの事をよく知っているような錯覚を覚え
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