8話 「パワフル・レディ」
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だぞ」
「そうだぜカナリアちゃん。年齢はともあれ君は俺達から見たら女の子なんだし」
クワブキ、アマルダ両名ともカナリアのことを「ブラッドリーについて回っている女の子」としてしか知らず、ものすごく過小評価しているという事だ。
「いえ、だから私は普通に戦えるから心配しなくていいと……」
「そうは言うが、万が一という事もある物だ。何せここはリメインズだからな」
「そうそう。危険になってからじゃ遅ぇんだぜ?」
その物腰は妙に柔らかい、というか子供に対して接するそれにしか聞こえない。頭ごなしに否定しない事で若干の寛容性を示しているのがまた彼女としては実に気に入らなかった。確かにマーセナリーとしての経験は向こうが上なのかもしれないが、それにしてもだ。
(わ、私より年下の癖にぃぃ〜〜……!!)
ガゾムという種族はお国柄というか、戦いの矢面に立とうとしない。その上に幼く小さな体躯のせいで周囲からは弱い種族だと思われがちだ。しかし、別にそんなことはないのだ。ただ戦い以上に興味のある事が多いから戦っていないだけなのだ。
――そもそも、力もないのに復讐など考えない。
私がいままでどれだけの鍛錬を積んだのかこの二人は知らないんだろう、と不満を隠せないカナリアはご機嫌斜めにぷいっとそっぽを向いた。……そういった態度が子供扱いされる主な原因なのだが。
「言わせておいていいんですか、ブラッドさん?」
ファーブルが小さな声で先頭に立つブラッドに声をかける。
ブラッドは振り返らずに「何がだ」と返した。
「二人ともカナリアさんの戦い方を知らないからあんなこと言ってますけど……相方としてフォローを入れないとこれ以上むくれちゃますよ?」
「むくれさせておけばいい。どうせあの二人もカナリアの戦いを見たら二度と同じことを言えなくなるだろう」
「僕としては彼女の怒りが2人に向かないかの方が不安なんですが……」
ファーブルの脳裏で、彼女の必殺武装に背後から追い立てられて鮮血に染まる2人の同僚の顔が恐怖に歪む、という悲惨な光景が繰り広げられる。……彼女なら実行可能だろう。
と、お喋りをしていると、不意にブラッドが足を止めた。
すんすん、と鼻を鳴らしたブラッドが静かに剣の柄に手を当てる。その異変に気付いた全員が立ち止まった。遅れて、通路の奥から魔物特有の獣の体臭が漂ってきた。
「魔物ですか?」
「複数いるな……恐らくエッジウルフか。曲がり角の先だな」
視界の悪いエリアでは特に、この微かな気配を直ぐに察知できるかどうかでマーセナリーの生死が決定する事が多い。その点においてブラッドの気配察知能力は犬種並の鋭さを誇る。魔物の種類まで言い当てられるほどに経験が多いのは第四都市内でも彼くらいだろう。
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