7話 「行雲流水」
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きく輝き、その刃が水壁に突き立てられる。
直後、壁となっていた筈の水が巨大な一つの刃のようにブラッドめがけて飛来した。
突きと等速になったその激流は、言うならば飛ぶ刺突。しかもその威力と範囲は術によって大きく底上げされている。
この槍術こそがファーブルの本領。水を用いた変幻自在の複合槍術。水を用いれば用いるほどに増える攻め手を的確に選ぶ様は、戦いの中に於いて華麗。
――だが。
「気迫はいいが、正面からとは愚策だな」
ただその一言と共に、ブラッドは大地に深く踏み込んで段平剣を真っ向から振り落ろした。
直後、避けることも難しいほどに速いその水の槍が、竹を裂くように真正面から正確に斬り散らされる。
遅れて、ドウッ!と剣圧が周囲の大気を押しのけた。
術さえ吹き飛ばす必殺の一振り。それこそがどこまでもシンプルで分かりやすい、ブラッドの強み。
ただ力強く、反応が早く、思い切りがいい。
但しその度合いは平均的な剣士を遙かに凌駕する。
その一閃を身に受けた魔物は例外なく両断され、断面からぶちまけられた鮮血は返り血として彼の身体に降り注ぐ。だからこそ、彼は鮮血騎士と呼ばれた。
そしてその事はファーブルも十分承知していた。承知したうえで、彼は仕込んでいたのだ。
「――貴方ならそう来ると思いましたよ。ですが、これならどうです!?」
その言葉が終わるか終らないかの内にブラッドは気付く。切り裂いて真っ二つになった水の斬撃がまだ術による操作状態にあることに。
先ほどの槍は、ブラッドの行動を読んだ上でのブラフ。
実際には、彼の周囲に水を展開する事を狙った作戦。
2つに分かれた斬撃は宙で蛇のようにうねり、彼の死角から降り注ぐ。
「――乱刃、双牙水!貴方に躱せますか!?」
「ならば、こうするか」
次の瞬間――ブラッドは自らの武器である段平剣を手放して、その場を瞬時に離脱した。
勝利とまではいかずとも一撃を確信していたファーブルの目が驚愕に見開かれる。
「なっ!?戦いの最中に自分の得物を手放すなど――!?」
そして、その隙が勝敗を別つ決め手となった。
「残念だが、剣士が剣を一本しか持ってないと思ったら大間違いだ」
油断で出来た一瞬の隙を見て大地を駆けだしたブラッドは、腰に装着したテレポットに素早く手を差しこみ、その中から小振りな細剣を取り出して一気に間合いを詰めた。
余裕があった筈の間合いが、獣のような瞬発力であっさりとリセットされる。
「くっ、しまった!乱刃、雲す――」
「チェック」
ファーブルが正面に発動しようとした水の神秘術を一瞬で切り裂いたブラッドの切先が、彼の喉に突きつけられた。
しばしの静
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