7話 「行雲流水」
[4/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ピール……自慢みたいでちょっと腹立つ)
ファーブルからしたら逆恨みもいい所なのだが、ああいう台詞が自然と出てくるのは彼女としては羨ましい。自分もいつか……と将来の妄想に思いを馳せる彼女はさておいて、戦いは新たな局面へと移っていった。
「ではそろそろ、術を使わせてもらいますよ!――行雲流水我が身に宿れ」
水面を揺らすように静かに、彼の周囲に大気中の『神秘』が収束していく。
神秘とはこの世の根源霊素。その神秘に法則を与えて操る術――それが神秘術。
槍に刻まれた術を構成する神秘数列が共鳴するように薄く光り、槍にひときわ大きく刻まれた「X」の記号が淡い光を放つ。
ファーブルは槍を掲げて、その槍に集まる神秘が海のように深い青みを帯びた。
「逆巻く『X』の運命数よ!我が瞬槍に水の加護をッ!!」
瞬間、槍の周囲を凄まじい速度で流動する水が溢れ出た。
『X』は水の運命を意味する術の根幹法則。
彼が最も得意とする神秘術にして、その本領発揮を意味する運命数。
槍に纏わりつく水と共に再びファーブルが深く踏み込む。
「――直刃、白水ッ!!」
下から救い上げるように振り切った槍の切先から、凄まじい水圧の水刃が一直線にブラッドに飛来した。大地を抉るその一撃を、ブラッドは焦らず躱す。斬撃が訓練場の壁に激突して激しく水が飛び散った。
もしこの壁が訓練用に特殊加工したイロカネ合金でなければ、今頃斬撃は隣の家を切り裂いていた事だろう。
躱した先に既に回り込んでいたファーブルが神速の突きを繰り出し、それをブラッドが身を翻して更に躱す。そして再度、剣と槍が衝突。刃と刃が激しく衝突を繰り返す。
水を纏った刃は先ほどまでのそれよりも重く、更には纏う水流の所為で刃が狙いすました方角に受け流されそうになる。故にブラッドはそれまでよりコンパクトな剣の振りで水の影響を最小限に抑えるぶつけあいに変えた。
槍のリーチと水の受け流しが生み出す圧倒的なまでの戦い辛さ。だが、条件では有利なはずのファーブルに余裕はない。ブラッドの膂力がその拮抗を脅かしているからだ。
数度ぶつかった後、これ以上は埒が明かないと考えたファーブルは槍が纏った水を地面に叩きつけた。
「壁となれ――直刃、璧水!!」
「ちっ……!」
操られた水は壁となって往く手を阻む。不意打ち的なその術にブラッドの舌打ちが漏れた。
下手に近づけば動きを封じられると考えたブラッドは避けるために一旦距離を取る。
だが、それこそがファーブルの狙い。
その隙を待っていたと言わんばかりに彼は腰だめに槍を構え直した。
「その隙、狙わせてもらいます!――直刃、画点進水ッ!!」
槍がひときわ大
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ