7話 「行雲流水」
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付き合ってもらってまして……今日は新しく組み込んだ神秘数列の具合も含めて一手お手合わせをと」
柔和な微笑みを浮かべる彼は、身体の線も細くてあまり戦士には見えない。
だがそんな彼も立派なマーセナリーの一人。事実、カナリアも何度か彼が魔物を狩る瞬間を見たことがある。
恐らくマーセナリーの中でも最も華麗なその槍裁きを。
「……ブラッドさん!少しお手合わせ願いたいのですが!」
彼の声に、ブラッドは剣の手を止めて一瞥し、静かに頷く。
「構わん。いつも通り術込みの一本勝負で構わないな?」
「はい。さて、今日は勝てると良いけどな……!」
「………むう。なんか男同士通じ合ってる」
ブラッドは彼の姿を見て粗方の事を察したようだった。
彼のビジネスパートナーを自称する彼女としてはちょっとファーブルが妬ましい。なんとなく、パートナーの癖に彼のそんなことも知らないのか?と嘲笑されている錯覚を覚えさせられる。
「やっぱり私も剣とか斧とかを使った方が分かり合えるのかなぁ?」
いつも素っ気ないブラッドが自分から乗り気な対応を見せているし、そのような腕と腕のぶつかり合いをしないと通じないものがあるのかもしれない、と思いつつ、彼女は事の成り行きを見定める。
ファーブルがその槍を上から突き下ろすような構えで向かい合う。
その姿はどこか優美で、水の流れ落ちる滝を想起させた。
ブラッドは手に持った段平剣の切先を上に向けて胸の前に構え、改めてその刃を腰だめに構えた。
詳しくは知らないが、確かあれは騎士が決闘の際に行なう挨拶の一種だったと思う。
実際には正式な決闘ではないので試合開始の合図はない。
相手が構え己も構えたらその時点で試合は既に始まっている。
ブラッドが構え終ると同時に、ファーブルは既に踏み込んでいた。
「――受けよ我が刃、散水!!」
「………!」
2マトレ近くある槍の切先が、目にも止まらぬ速度でブラッドを襲う。
無数に乱れ飛ぶ刺突に、大型剣を獲物にしているとは思えない速度で対応。ファーブルはリーチを生かして揺さぶりをかけるように突くが、ブラッドはその場からほとんど動かずにそれを裁く。
演武のように華麗な動きと、飛び散る火花。突きの速度とリーチは恐ろしく速いにも拘らず、ブラッドはその速度に危なげなく対応した。
「ふっ!」
宙を舞う無数の火花と甲高い激突音の末、ブラッドが突きの僅かな隙をついて槍を弾き飛ばす。
だが、ファーブルはそれを予想していたように余裕を持って身を翻し、再び距離を取って構える。
「おっと!ふふ、やはり競り負けますか。剣道三倍段といいますが、いつ戦っても貴方は計り知れない」
(………むむぅ。人の前で付き合い長いですア
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