7話 「行雲流水」
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昨日の夜以来、どこかブラッドの雰囲気が変わった。
もとより彼は変わった男だった。ヒト的な生活を送っているようでいて、そこに籠る感情が希薄。なのに戦いにおいては誰よりも闘争感情を剥き出しに剣を振るう。
普通ならばヒトの生の実感は些細な日常の中にある。だが、ブラッドはその日常の重要なファクターに戦いを組み込んだ。リメインズに命を賭けるマーセナリー達の中でも、彼ほど戦闘を自然に行う者はいない。言うならばその自然こそが歪で不自然だ。
カナリアは、彼の失った記憶の中にその原因が転がっていると考えていた。そして、それがはっきりした形として捉えられない苛立ちが、余計に彼を戦いに埋没させる。だから記憶を思い出せばブラッドも自分の悩みに整理をつけられる筈だと思った。
彼女なりに今の歪なブラッドの在り方を慮って、記憶を探すことを提案した。
今のブラッドからは少し焦りのようなものを感じる気がした。
朝食のパンを齧るブラッドはいつも通りの仏頂面にも見えたが、余り食事に関心がいっていないのかいつもより食べるペースが早かった。
(………思いたったらやらずにはいられない性質?だとしたらブラッドさんにも可愛い所がありますねー♪)
そう考えると、今のブラッドがそわそわする子供のように見えてくる。何食わぬ顔で食事をとりながら、内心でくすりと笑った。
「……?なんだ人の顔をニヤニヤと」
「べっつにー♪」
「………いい歳して妄想癖か?」
「そんな訳ないじゃないですか!?私が変な人みたいな言い方しないでくださいよねぇッ!!」
= =
マーセナリーは特別な用事でもない限り、朝の9時にはリメインズに入る。それまでは買い物をしたり鍛錬をしたりと、それぞれが思い思いの行動をする。そして、ブラッドはいつもこの時間に剣の鍛錬を行う。場所は決まって宿の裏にある小さな鍛錬場だ。
剣としては大き目な段平剣を縦横に振り回し、刃が空を切る音と風圧が周囲に響く。
素振り、袈裟切り、横切り、突きなどを流れるようにこなすその様は、どこかの騎士団にいてもおかしくなさそうに見えた。一つ一つしっかりと踏み込みながら振りかざされる刃は、リメインズの魔物すら一刀両断する威力を秘めている。
カナリアは剣術に造詣が深いわけではないが、彼の剣技は素人目に見てもずば抜けている。
普段の彼女はそれを部屋の窓から眺めつつ、携行砲に使用する弾丸の火薬を調合したりしている。
だが生憎昨日はリメインズにいかなかったために弾薬の補充は必要なく、今は手持ち不沙汰にブラッドの剣を近くのベンチに座って眺めるだけだ。
彼女がブラッドとコンビを組んでいるのには理由がある。
理由その一、容姿。
子供にしか見
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