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英雄は誰がために立つ
Life10 聖書の子らの新たなる道 −禍の団、強襲−
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言う訳では無いのだろうが、自分に目掛けて向かってくる走狗を蹂躙しようと小剣(クラディウス)を持っていない左手で、殴り掛かろうとする。

 「くっ、ふっ・・・」

 辛くもそれを避けるゼノヴィア。
 先程の時点で指先が掠っただけで大ダメージを受けると理解している故、慎重かつ迅速の避け続ける。

 「ふん」

 片腕だけでは埒が明かないので――――と言う思考よりも、圧政者へより迅速に辿り着き屠ることを使命としている為、使っていなかった小剣(クラディウス) をただ単に振るった。
 それを・・・。

 「木場!」
 「ハイハイッ!」

 後ろを向かずに援護を頼むゼノヴィアを、人の返事を聞かずに突っ込む故に少々自棄になっている祐斗が魔剣創造(ソード・バース)で強固さをイメージして創り出した金剛剣で受け止める。

 「ぐぅっっっ!!!」

 ズブリ。

 泥沼でもないのに足が地面に沈む。
 魔剣のイメージとしては正解だが、下から受け止めてしまったために重力加速度も加わった衝撃により、体に震動が響き地面ごと足が沈んでいった。
 しかし―――。

 「――――今だ、ゼノヴィア!」
 「ああ!」

 祐斗の思いに応えるべく懐に潜り込むようにする体勢をフェイント(・・・・・)に、左脇に潜り込んだすぐ後に、左の首筋にデュランダルで切り込む。

 「これで――――如何だ!!」

 少しだが切り裂いた痕が出来、鮮血が舞う。
 人体で言えば急所の一つだ。しかしそれ(・・)は人間では無く“英霊”であり、耐久値に至っては計測不能のEX(規格外)
 だからなのか、躊躇いも戸惑いもせずに笑みを浮かべたまま裏拳の要領で拳をゼノヴィア目掛けて放った。

 「クッッ!?」

 それは過去、教会の戦士として今まで戦い続けてきた直感の賜物かはたまた偶然か、咄嗟の判断力でデュランダルでバーサーカーの手甲を受け止める。

 ズォオオ。

 「グゥッッ!!」

 衝撃は受け止めきれずに、そのまま地面に叩き付けられた。しかし、落ちた場所が悪かった。

 「!?」

 横向き状態で倒れていると、後ろから存在を感じるゼノヴィア。

 「逃げて下さい、ゼノヴィアさん!」

 アーシアの悲痛の叫びが耳を打った。
 それに反応して振り向くと、ゴーレムの大きな掌のみが見えたゼノヴィア。1メートル程しか間が空いてなかった。もはや防御も回避も間に合わぬ。

 ズッォン!

 ゴーレムの掌がゼノヴィアを押し潰そうとする瞬間、赤い“何か”が通り過ぎて行ったのを何人かが確認した。

 しかし、傍から見ればゼノヴィアの運命は決定的。
 だが、ゼノヴィアがいた地点から少し離れた場所に砂埃が舞っていた。

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