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リメインズ -Remains-
6話 「ロストメモリーズ」
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メモ用紙にさらさらと必要になるパーツを書きこみながら、もう片方の手は手早く携行砲を組み立てていく。その手には淀みが一切ない。
 朝の内にこの携行砲の組み立てとメンテナンスを行い、その後に朝食。
 彼女の朝はいつもこのように始まる。

 そしてメンテナンスが終了すると、彼女は決まってあるものを抱いて祈りを捧げる。
 本来ならばそれはこの星に命を齎したと言われている女神に捧げる筈のもの。
 だが、彼女は30年前からずっとたった一人のヒトに祈りを奉げている。

「貴方はこんな因果な事をしてる私を……憐れむかもしれないね」

 小奇麗な装飾が施された短剣を愛おしそうに握り、囁くように。


「でも、それでも、私は貴方の仇を見つけたい。だからお願い――私を導いて」


 カナリア・アドシオーレの意志は、復讐を決意したあの日から決して色褪せることはない。



 = =



 同刻、オセーニ大陸の何所とも知れぬ場所に、ひとつの文が届いていた。

 まるで隠れるように森にひっそりと存在する、風通しの良い建築物。周辺の人間は「亡霊の森」等と揶揄し、一度踏み込めば方向感覚を失って遭難する危険な森だった。故に、その森に住み自在に動き回る「彼等」を、周囲は亡霊と呼んだのだろう。

 建物の窓から伝書鳩――ではなくカラスが入り込む。その足には白い紙片が括りつけられていた。
 カラスはそれが仕事であるように窓の前にいた男の目の前にある足かけまで移動し、男は足に括りつけられた紙片を取り外した。

 明かりも風通しもある筈のその建物内は、どこか陰鬱で閉塞的な気配が漂う。
 その理由は恐らく――そこに住んでいる者たちが人間性を削ぎ落したように何も喋らないからだろう。最低限のコミュニケーションを除く発言や私語がない。表情も凍りついたように変わらない。どこか、ヒトそっくりの人形が立ち並んで喋っているような熱のない空間。

 その奥の部屋に、一人の少年が座していた。
 目の前にある書類を選別し、サインするその少年に、男は恭しく頭を下げる。

「統領、依頼です」
「渡せ」

 男は一人の少年にそれを差し出すと、控えて跪いた。
 周囲にはその男と同じように様々な年齢の男女が跪いている。

 少年は、無言で紙片を広げる。文字の全てが暗号化されたその文は、一見すると他愛もない世間話が書いてあるようにしか見えない。だが少年はそれをものの数秒眺めて、紙を近くにあった燭台の火に放り込んだ。

 果たしてそれで解読できたのか。そんな愚かしい問いをする者はこの場にはいない。
 何故なら少年はその場の代表であり、誰よりも賢く、誰よりの思慮深く、そして誰よりも強いから。
 影をそのまま纏ったかのような深い黒髪を揺らすその少
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