6話 「ロストメモリーズ」
[3/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
と呼ぶほどロマンチックなものではないのだろう。
= =
まだ夜が明けるか空けないかの時間帯。
空が明らみ始めたその時間に、カナリアはぱちりと目を覚ました。
「ふあぁ……よく寝たぁ」
それは彼女がまだ母国「エディンスコーダ」で「職人」をしていた頃に叩き込まれた生活習慣であり、今でも彼女はその習慣を引きずっている。彼女としてはむしろその方が都合がいいので、別段矯正する気もないのだが。
寝ぼけ眼を擦って、ふあぁ、と気の抜けた欠伸をしたカナリアは、部屋に置いてある私物のボックスを空ける。外見は1マトレ(※約1メートル)ほどある長方形の黒い箱にしか見えないそれは、実際には「テレポット」と呼ばれるアイテムだ。
神秘術の発達により、近年は道具に神秘数列を書きこむことで付随機能を持たせることができるようになってきた。テレポットはその代表とも言える。
近年発見されたばかりの神秘数列を組み込んだこのテレポットは、その内部に擬似拡張空間を生み出し、小さな体積の入れ物の中により多くの物を詰め込める機能を持つ。
希少性と扱う数列が高度なことから未だ高級品ではあるが、上級の冒険者などにとっては今やなくてはならない道具へと移ってきている。そしてカナリアの持つそれは、一般に出回っているテレポットの10倍近いサイズと容量を誇る。
テレポットを含む高度な道具には大抵それを作った制作工房を表す印が入っているものだが、その箱にそのようなものはない。ただ端の方に小さく「アドシオーレ」という彼女の姓が彫り込まれているのみ。
これが意味するところは、このテレポットがハンドメイドで――しかも彼女が自作で作り上げたという事実。つまり彼女は母国でそれだけ高度な技術を学んでいたことになる。
「さぁて、お仕事の準備準備!ブラッドリーさんの記憶探しも約束したし、今日からはもっと気合い入れて行かなきゃ!」
当の本人はそのテレポットの中から次々に鉄製の筒を取り出して組み立てる。その動きは手慣れており、次々に部品を装着したりギミックを確かめたりといった動作を流れるようにこなしていく。
それは、彼女がリメインズに持ち込む「携行砲」という特殊な武器だ。
これもまた彼女が戦いのために自作した物。大砲をなるべく威力を落とさずハンディサイズまで小型化することをコンセプトとした物で、その形状は銃ともバズーカとも知れない。
砲身を取り外して覗き込んだカナリアは小さく唸る。
「ん……ちょっとライフリングが削れて来たかなぁ?金属疲労もあるし、一度インゴッドに戻して金属配合代えてみよっかな。後のパーツは作るより買った方が早いから……っと。今日から予備に取り換えて、後は暇な時間にパーツ受注しとこっと」
片手でペンを握り
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ