第十四話 思惑
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立てておいて待たせてしまった」
「いえ、お気になさらないでください」
本部長がソファーに座る。あまり機嫌は良さそうではない、そのままこちらをじっと見ていたが一つ息を吐くと口を開いた。
「准将、どうかね、そちらの状況は」
「あまり良くありませんね」
宇宙艦隊司令部の状況は良くない、その事は既にキャゼルヌ先輩には何度か伝えている。本部長も承知しているだろう。機嫌が良くないのはその所為だ。
「新司令長官は体面を気にするあまり、笑う事を忘れたようです。ビュコック提督やウランフ、ボロディン提督等の実力、人望の有る提督達とも全然上手くいっていません。その一方でトリューニヒト委員長に近づきたい連中がドーソン司令長官に擦り寄っています」
「……」
「私も避けられています。ドーソン司令長官は私をシトレ本部長が差し向けたスパイだと思っているようです。多分、私が今ここに居る事も誰かが司令長官に教えているでしょう」
溜息を吐かないで欲しい。私が悪い事をしているような罪悪感を感じてしまう。誓って言うが私には非が無い、問題はドーソン大将に、そして彼を宇宙艦隊司令長官に選んだ政府に有る。
「厄介な事になったな」
「ええ、とんでもない事になりました」
シトレ本部長の言葉に私も同意した。全くとんでもない事態になった。まさかヴァレンシュタイン中将がブラウンシュバイク公になるとは……。
最初は何の事か分からなかった。だが事情が分かるにつれ顔が引き攣った事を覚えている。次期皇帝の座を巡って争っていたブラウンシュバイク公とリッテンハイム侯、そしてその両者を抑えていた政府、軍……。その四者が和解した。
ヴァレンシュタイン中将がブラウンシュバイク公爵家の養子となり、エリザベート・フォン・ブラウンシュバイクと結婚する事でブラウンシュバイク公爵家は後継者争いから降りた。次期皇帝はエルウィン・ヨーゼフ、皇后にザビーネ・フォン・リッテンハイム、そしてエーリッヒ・フォン・ブラウンシュバイクが重臣として皇帝を補佐する。
これまではフリードリヒ四世の後継者が決まっていなかった事が帝国の最大の弱点だった。皇帝に万一の事が有った場合、次期皇帝の座を巡って内乱が起きる……。前回のアスターテ会戦はその弱点のおかげで助かった。そうでなければ同盟軍はとんでもない損害を受けていたはずだ。しかしもうそれは期待できない……。
「政府のお偉方も頭を痛めているだろう。予測が外れたのだからな」
「そうですね、しかしこれで政府も状況の厳しさを理解したはずです」
「まあ、そうだな」
本来ならドーソン大将が宇宙艦隊司令長官になる事は無かった。彼がその地位に就けたのは帝国が内乱勃発の危機に有り積極的に外征には出られないと政府が判断したからだ。政府はその間に軍を宇宙艦隊を再
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